小説

『涙の確証』加持稜誠(『竹取物語』)

 
 そんなこんなで僕としても、彼女にとって一番近いファンになれたかな? と思い始めた矢先……
 彼女は姿を消した。
 予定していたライブ日程を大量に残したうえで、ぴったりと彼女は現れなくなった。無論連絡先など知る由もない。体調不良か、何かしら予定が重なったのか、彼女も何かしら事情があったんだろう。いずれひょっこり戻ってくるかも知れない。そう信じて、毎日ライブ場所に足を運んだが、一向に彼女は現れなかった。日を重ねる内に積もる寂しさと、擦り減っていく期待感。心に空いた風穴は日増しに『僕』を侵食していった。






 2か月後。
 彼女への想いを引きずりながらも、日々の喧騒に徐々に、心のかさぶたが出来始めた頃。
 僕は仕事でかつての聖地を訪れた。
 そして仕事終わりに少しだけあの場所へ行ってみる事にした。
 あの頃に想いを馳せながら懐かしい街並みを歩いていたら、一人のキャッチらしい男がビラを僕に手渡してきた。僕はそれを無造作に受け取り、一瞥する。
 「……!」
 僕はそのビラを見て、驚愕した!
 そこには、複数のアイドルが競演するライブイベントが記載されており、その出演者の中に!
 「居た……!」
 髪の色も、化粧も、服装も、180度違うけど、3人組の真ん中で微笑む女性は、間違いなく『彼女』だ! 小さな写真だけど、それを『彼女』と断定する自信が僕にはあった。そしてそのライブ会場は目と鼻の先。開演は20時! 
 「行ける……」
 気が付けば僕は、そのライブ会場へと走りだしていた。



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