体育館の日陰で休んでいると、栞さんも体育館の日陰で休んでいた。
栞さんも体調が悪いのだろうか。話しかけようか、なんて切り出せば不自然じゃないだろうか。そんなことを考えていると、栞さんがうずくまった。肩が震えていて呼吸が速い。栞さんが過呼吸を起こしていた。だが僕は体が動かずただ見ているだけで何もできない。そのうち女子生徒と先生が気づいて駆け寄ってきた。
一番先に気づいたのにもかかわらず、助けを求めたり、声をかけたり、何かできることがあったはずだ。なのに何もしてあげれなかったことに後悔をした。保健室によってみようと思ったが、何もできないのでそのまま教室に向かうことにした。後ろから騒がしい奴らが階段を走りながら僕を抜かしていく。奴らの一人が僕の肩にぶつかった。僕は転んだ。ああ、このまま階段から転げ落ちてしまっても誰も悲しまないんだろうな。
反射的に僕は何かを掴んだ。そのため、僕は階段から落ちることもなくケガもしなかった。立ち上がろうとすると、僕の前にはあの隣の席のイケメンが立っていた。僕はイケメンのハーフパンツを持っていた。僕はイケメンのハーフパンツを脱がせてしまったらしい。パンツ一丁になったイケメンは、ハーフパンツを僕に渡した。
「君にあげるよ。」
「いや、でも。」
イケメンは僕を見つめ、優しく僕に微笑んだ。
「君にはこれが必要なんだ。変わりたいんだろ。」
僕がハーフパンツを返そうとすると、イケメンは頑なに僕に押し付けてきた。
「何が言いたいんだよ。これは僕のじゃない。それとも何?僕が触ったからいらないとか?ていうか、そんなかっこで教室戻るのかよ。」
「わかるんだよ。僕には。君が願ったことも。」
イケメンはそういうと、僕にハーフパンツを押し付けてパンツ一丁で歩きだした。
「君。放課後、体育館の裏に来るんだ。」
振り返ってそういうとイケメンは走っていった。
放課後、言われた通りに体育館裏に行った。
後から、イケメンはさわやかな笑顔で僕に手を振りながら駆け寄ってきた。
「ごめん。麦野君。ちょっと待った?さっき華道部員に話しかけられちゃって。グラウンドに猫がいるっていうからさ。」
「で、何。何か言いたいことあるんだろ。」
「あーそうだったね。」
イケメンは先ほどとは違う真面目な顔で、
「わらしべ長者って知ってる?」
と聞いた。
「昔話?貧しい若者が観音様に貧乏から逃れたいって願って、最初に持っていた麦が、物々交換で最終的にお屋敷が貰えたって話?」
「そう。僕の先祖はわらしべ長者なんだ。」
「え?」