小説

『異国の夢』松谷尚紀(『高野聖』)

 途中から、聴いていた曲は「Agua De Beber」に変わっていたが、まぁ、仕方ないだろう。何も書けないよりはマシだ。須藤さんは、この作品を読んでどう思うか。嫉妬するだろうか。私は何となく、心の中で恋心に火を注ぐ油になってくれればいいな、と感じていた。
 そろそろ、店を出ようか。そう思って店を出ようとすると、店の奥の方に新聞を広げて、コーヒーを飲んでいる女性がいた。黒崎か。そう思って、近付いていってよく見ると彼女に似ているが、彼女ではなさそうだった。彼女は今何をしているだろう。

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