小説

『変人老科学者の計画』十六夜博士(『旅人とプラタナス』)

ツギクルバナー

 ヒュンという音がした。
 次の瞬間、そのスペシャルサービスの男は、自分の隣にいる守るべき男が崩れ落ちるのに気づく。
「大統領!」と咄嗟に叫び、手を伸ばす。だが、大統領と呼ばれた男は、そのまま道に転がった。
辺りは騒然となる。
 大統領と呼ばれた男は転がったまま、動かない・・・

☆☆☆

「おジイさん! こんにちは!」
 僕は10メートルほど先でハンモックに揺られながら本を読んでいるおジイさんに、待ちきれない思いで、思い切り声をかける。
 僕の声に気付くと、おジイさんは、読んでいた本から僕の方に顔を向けると、いつものように優しく微笑んだ。
「やあ・・・、君か・・・、また来たのかい?・・・」
「うん・・・来ちゃダメ?」
 おジイさんは、「そんなことはないさ・・・」と言いながらハンモックを降り、微笑みながら僕のところにゆっくりとやってきた。そして、僕の頭に手を優しく置き言った。
「ようこそ!」
 僕はおジイさんを見上げ、微笑む。12歳の僕の身長はまだ140cmぐらいで、170cm近くあるおジイさんは近くで見ると、とても大きく見えた。

 僕が「おジイさん」と呼ぶ人は、村の外れに一人で暮らしていた。おジイさんは、科学者で、おジイさんが住む家の隣の工房で色々なもの作っては、実験していた。だから、僕はおジイさんのところに来て、新しい発明を見せてもらうのがとても楽しみなのだ。今日も何か新しいものをおジイさんが作ってないだろうかと思ってやってきたところだ。
 お父さんから聞いた話では、おジイさんは70歳ぐらいらしい。村にいる70歳ぐらいの普通のおじいさんは禿げていることが多いけど、おジイさんの髪はフサフサで、真っ白で、そしていつもボサボサだった。体は痩せていて、ちょっと猫背な感じでゆっくり歩く。
 村の人はおジイさんのことを「変人」「奇人」「マッドサイエンティスト」「役立たずの科学者」など、ひどい言い方で表現していて、僕はそういう言い方を聞くと、いつもとても不愉快な気持ちになっていた。

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