小説

『ウシロアシ』うざとなおこ(『ウサギとカメ』)

 ウサギは伝説通り、あわててゴールへ向ったけれど、早足の存在が消えて眠ってしまい、歩みのノロいはずのカメに負けた。
 ウサギは、肩をがっくり落し、さみしいウサギの穴ぐらにしょんぼり帰っていった。

 お天道さまは、あいかわらず転々笑ったり泣いたりをくり返していたけれど、何日か過ぎた朝、ウサギ穴のポストに、葉っぱの手紙が入っていた。コトン。
―あした、お散歩ピクニックにいこう。―
「ウサノサン!」

 朝になると、ウサギはうれしくって、はねて、はねて、はねて、うっかりウシロアシが追いついてないことに気がついた。
「また、やっちゃったよ」
 ウシロアシが追いつくまで待っていると…、
 ウサノサンが、ウシロアシとハネハネやってきて顔を真っ赤にして笑っている。
「ウシロアシさんと、散歩したのなんてはじめてよ!」
 今度はウサギが、顔を真っ赤っかにして、ウシロアシをささっとはくと、ウサギより先にお散歩したウシロアシにジェラシーを感じ、えいっ!と思わずウサノサンの手をつないだ。
「ふふっ」ウサノサンはまだ笑っているけど、ふたりは、明るいお天道さまの下をぴょんぴょんお散歩し、おいしい、柔らかい草の上で、ピクニックをうんと楽しんだ。

   *   *   *
 ウサノサンのことは、遠いあこがれに終わり、足の速くなったカメは、ウサギに勝ったことで、カメの常識をくつがえし、カメ界の中でしばらくスターになっていた。
 それにもだんだん飽きてきたカメは、ものすごく足がおそくて、ものすごくまつげの長い、愛らしいカメミンと、山の頂上で仲良く海を眺め、頂上でラビットレタスやピラミッドレタスを栽培しながら、夜は降る星を見上げ、朝食にはレタスサラダを食べて、とっても長生きした。

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