SOMPO認知症エッセイコンテスト

『諦めないで』井野友香

あなたの周りで認知症の症状や診断され、関わりが難しいなと感じた方いますか??
その方との関わりを諦らめていませんか??
私は介護の仕事に就いたばかり時、認知症について研修で学んでから現場デビューしたものの、いざ現場で認知症の方と関わる中で「認知症の方と関わりたくない。私にはもう限界」「どうせ忘れてしまう。できないだろうな。」と関わりを諦めてしまう自分がいた。
しかし担当のお客様(A様)との出会いが、私の認知症への考えを変えたのだ。
担当なのでスタッフの誰よりもA様のことを把握しないといけない。
A様は笑うことが少なく、入浴拒否があり入浴ができないことやアクティビティに案内してもすぐに帰ってしまうなど課題が多くある方だった。
部屋に伺っても「帰って下さい。一人にさせて下さい。」と言われることもしばしば。
A様と「どうしたら親しくなれるだろうか。私を受け入れてくれるだろうか。」と悩む日々が続いた。
悩んだ末、出勤日必ず10分はA様と関わる時間を作ろうと決めた。
最初は挨拶程度から始まる。日に日に私の顔をなんとなく覚えていてくれるようになり、質問すれば自分のことを話してくれ、笑顔も少しずつ見られるようになった。
担当になって4カ月経った頃、A様と夢について話していた時A様が「息子にもう一度私の作った料理を食べさせてあげたい。料理がしたい。」と話してくれたのだ。
私はA様の夢を実現したいと思い、息子様に事情を説明したところ「えー母がそんなこと言ったのですか。びっくりです。母⒑年以上包丁持っていませんし、認知もありますが料理なんかできますかね」と話されながらも許可をもらえたので、A様との月数回の料理作りが始まる。
A様がどの程度料理できるかわからないのでまず量る・混ぜるところからスタートした。
みるみる昔の感覚を思い出し、今では包丁を持って料理するまでに成長。コロナが収まり面会制限解除されたら、息子に食べさせると様々ジャンル料理に奮闘中。
A様自分の好きだったことが思い出せたことで、笑顔が増え、生活も明るくなり、入浴拒否もなくなった。認知症であると忘れさせるぐらい生活はとても充実した生活を送られている。
家族・親族・今まで親しくしてきた友人・自分自身が、認知症と診断、認知症症状が現れるようになると心配や不安を感じるかもしれない。
そんな状況時「もうダメだ。」と関わりを諦めてほしくない。
関わる中で、同じ話を繰り返しされること・話がかみ合わないことがあるかもしれないが、決して怒らず、優しい気持ちで接してほしい。
ぜひ昔好きだったこと、趣味を試しに行ってほしい。
昔好きだったこと、趣味は体が覚えている。
きっと何か新しい発見に出会えると思う。
その方との関わりを絶対に諦めないで。