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『春田高校には停まりません』角田絵里

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けたたましい音で目覚まし時計が鳴る。
鞠子は慌ててスイッチを押すが、うまく止められない。やっとの思いで目覚まし時計を止めると、大きな欠伸をして渋々、布団から出た。
寝癖のついた髪を軽く押さえながら階下に降りると、また父と母の言い争う声が聞こえた。
「陽太からも講習位行くように言ってよ」
「そういう時期なんだよ。あいつは。そのうち飽きるだろ」
「そのうちっていつ?いつもそればっかり。このままだったら進学なんて無理よ!」
母の低いような高いような声は人の気持ちを焦らせるといつも思う。
最近の父と母は弟の陽平のことでしょっちゅう喧嘩をしている。

弟の陽平は3つ違いで今年高校受験を控えている。
最近はもっぱら友人と夜遅くまで遊び更け、テストもほぼ赤点。髪を赤っぽい茶色に染めた時、母は泣きながら落胆していた。
鞠子は来春、高校を卒業する。今週中に提出しなければならない進路相談の用紙は両親に出せずにいた。
「今日の第12位はごめんなさい。うお座のあなたです。」
アナウンサーのお姉さんの軽やかで、残念そうな口ぶりを聞きながら、鞠子は朝食の残りのトマトを口に放り込んだ。

いつもよりのんびりし過ぎたせいか、家を出る時間が少し遅れた。でも、大丈夫。あのバスはたいてい遅れるから。そうタカをくくってゆっくり歩いていると、遠くからいつものバスが信号待ちをしているのが見えた。
「あ、やば」思わず口に出すと、鞠子は猛ダッシュでバス停へ走り、バスに駆け込んだ。
バスはいつもより混んでいた。鞠子は真ん中の手すりをつかみ、深く息を吐く。
バスに乗って立ち止まった瞬間、汗がじんわりと背中を濡らしていった。鞠子は自分の顔がみるみる火照っていくのを感じながら、額に流れていく汗をハンカチで拭った。
40代位の女性がトートバッグを重そうに持ち上げ、バスを降りる姿をぼんやりと眺めていると、バスはいつもまっすぐ行く道を右側へ曲がっていった。
「あれ…」
不安な鞠子の気持ちは置き去りに、バスはどんどん見慣れない土地へ向かう。
乗客が1人2人と減っていくたびに胸の鼓動が大きくなる。寝癖のついた高校生らしき男子が降りた後、女の人の機械的な声でアナウンスが入った。
「こちらは霧幌駅行き。米沢経由です」

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