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『ボニンブルーの海で』十六夜博士

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 青に向かって泳ぐ。
 蒼太のひと蹴り、ひと蹴りに青が色を深くしていく。
 青の深さに満足すると、蒼太は身体を反転させ、海に身をまかせた。手が届きそうで、でも、あと少しで届きそうもないところに、小さく囚われた空がキラキラと輝いている。
 海を飛んでいる――。
 故郷の海でスキューバダイビングをするときに、蒼太が一番好きな瞬間。蒼太と空の間を飛ぶのは、鳥ではなく魚たち。この違和感がなんとも言えない。
 仰向けのまま、しばらくたゆたうと、海亀が悠々と現れた。
 海亀は蒼太に顔を向けると、しばらく蒼太を見つめた。
(……)
 蒼太はしばらく海亀と見つめあった。

☆☆☆

 島に戻ってきて、2週間になる。
 きっとみんな心配しているよな――。
 そんなことを思いながらも、蒼太は気の向くままの日々を送っていた。
 蒼太は小さい頃から陸上が飛び抜けていて、小学校の運動会で一等を何度もとっては、母を大喜びさせた。年齢が上がるとともに、長距離にシフトし、高校を卒業するタイミングで、本土の駅伝名門大学に推薦で入学した。その後、実業団に入りマラソンに転向して以来、ほとんど島に帰らず、マラソンに没頭してきた。だが、一昨年、足を痛め、長期休養。その後、リハビリをし、レースに戻ったが、満足な成績を出せずにいた。引退の二文字も頭を過ぎる。
 走ることの意味って何なのか――。
 大好きな故郷に行けば答えがあるかもしれない。今回の帰郷はそんな思いからだった。

 海から上がると、蒼太は自転車に飛び乗り、雅樹の家に向かった。雅樹は蒼太がマサ兄と呼ぶ、4つ年上の従兄弟だ。
 マサ兄の家に着くと、いつものように柴犬のココロが蒼太を歓迎してくれた。ワンワンと自分をアピールする鳴き声とともに尻尾を振っている。
「ココロ、良い子にしてるか」
 蒼太もいつものようにココロを抱きしめた。ココロの柔らかい香りがする。
 マサ兄が飼っているココロにはコロという先代がいた。コロはマサ兄が拾ってきた柴犬で、蒼太が物事ついた頃にはコロは飼われていた。マサ兄と蒼太が兄弟のように仲良くなったのは、コロのお陰でもある。コロを可愛がり、大切に世話する中で、2人の絆は深まっていった。コロを連れて、毎日いっしょに散歩をし、毎日色々な事を話した。
(あんたたちは三兄弟ね)
 あまりに仲の良い2人と1匹に、いつしか蒼太の母、智子は言った。
 だが、コロは、蒼太が中学2年の時に死んでしまった。マサ兄と蒼太の落胆ぶりはものすごいもので、2人とも3日間寝込んだ。その時、蒼太はその喪失感を頭で理解できなかった。ただただ、コロの面影が去来するたびに涙を流すだけだった。大切なものを失う喪失感を初めて実感した。見かねたマサ兄の母、由美が、知り合いから貰ってきたのがココロだ。2代目の小さいコロということで、コ・コロと名付けられた。
コロを失った意味――。

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