最初で最後の握手は離れがたいものだった。互いの手が離れた後も彼の手は暫く名残惜しそうに差し出されたまま残っていた。 そこから彼に背を向け50メートルほど歩いたところで一度振り返った。男性はこちらを向いて大きく、そしてゆっくりと手を左右に振っていた。表情まではよく見えないがきっといつものあの優しい笑顔だろう。私も自分の頭よりずっと高く手を挙げて2,3度大きく振り返した。 彼の持っている薔薇が一瞬金色に光輝いた気がした。 8/8 前のページ 10月期優秀作品一覧 HOME