リンレイアワード10月期にご応募いただいた作品の中から選ばれた優秀作品36作品です。
『メイストーム』
霧夜真魚
高級老人ホームで孫に成りすまし被害総額五十億円というオレオレ詐欺を働いた身元不詳の少年を現行犯逮捕するため、刑事の片瀬は清掃員として老人ホームに潜伏した。偽の孫だと知りつつ受け入れる孤独な老婦人と容疑者の少年との交流から、片瀬は詐欺事件の根幹にあるものを探り出していく。
『雨の朝』
霜月透子
雨の日、わたしは早めに登校する。湿気で濡れた廊下にモップを掛けるためだ。次々と登校する生徒の傘から水が垂れると、またモップ掛け。誰に頼まれたわけでもないのにそんなことをするのは、小学生の頃に見た少女のことが記憶にあるからだった。
『鏡の中のミッチャン』
矢鳴蘭々海
平成七年に起きた阪神・淡路大震災で、当時中学一年生だった陽子は同級生で友人のミッチャンを失った。ミッチャンはとても丁寧に掃除をする心優しい女の子だった。彼女が死んだのは自分にも原因があると考える陽子は、家事代行サービスの仕事で窓の掃除をしながらミッチャンのことを思い出してしまう。
『幸せを呼ぶ魔法』
春日あかね
ライターのサキは上司に言われ「日本のキレイ」についての原稿を書いている。が、なかなか進まず、子どもの頃の思い出に浸ってしまう。そして、いつしか夢の中。そこで体験することから、ついに「日本のキレイ」を悟る。果してそうして完成した原稿の出来は?
『佐伯さんと約束の橋』
守村知紘
近くに横断歩道が出来て以来、ほぼ用済み状態の歩道橋を毎日欠かさず掃除するお爺さんが居た。ただ人の役に立ち、感謝されたいだけなら、もっと良い場所がいくらでもありそうなものなのに。何故そのお爺さんは、そして主人公は、誰も見向きもしないボロボロの歩道橋を掃除するのか?
『桜が咲く頃 君たちは』
香澄ユミ
高校2年生の彩香は、親友のカリンとブンちゃんと楽しく毎日を過ごしていた。ある日、自分たちがまもなく「受験」という人生の節目を迎えることを意識し、未来というものについて考え始める。ある女子高生の、何気ない日常の物語。
『私の中の迷子の私』
川瀬七貴
子供の頃から何をやっても駄目な私。結局大人になっても駄目なままだった。そんな私を癒してくれるは、あるマッサージ店だ。施術を行う女性は、美人で優しく私の憧れだった。ある日、仕事で追いつめられた私は欠勤し、ついに会社を辞めてしまう。そんな私に彼女が話してくれた衝撃の内容は・・・。