高齢者向けの施設に入居するひとりの女性が過去を振り返る。かつて愛した二人の男性の思い出を一冊のノートに綴る。
長崎・光源寺に伝わる話。毎夜、飴を買いに来る女のあとをつけると、その女は幽霊で泣く子を抱いたままであった。その世界にコラボしたことをきっかけとし、トラウマを克服しようとする女性の物語。
彰斗は幼馴染の彩夏が同級生の晴樹の下駄箱に手紙を入れるのを見つけ、とっさに鞄の中に隠す。晴樹から返事をもらえなかったことをきっかけに彩夏は彰斗と付き合うが、ある日彩夏は彰斗の部屋から手紙を見つけ、「そんなことしなくても」という言葉を残して出ていく。手紙は晴樹への断りの返事だった。
中学の国語の授業中であった。先生が「わが庵は~都のたつみ~しかぞ住む~」と喜撰法師の和歌を詠むと、一人の生徒が手を挙げた。「先生!『みやこのたつみ』とは何ですか!」と。先生は答えた。「ウン。これは人の名前だ」「えぇ?人の名前?」「あぁ。これは『都のたつみちゃん』といってね」。
進路に悩む一色大和(いっしきやまと)の前に現れたのは、自分そっくりな姿をした自称・天女。天女は、羽衣を掛けていた松が「松枯れ」で枯れてしまったと嘆く。松が枯れる病気に興味を持った大和は将来の夢を見つける。十年後、樹木医になった大和は悟る。あの時出会った天女は、自分自身だったのだと。
竹から生まれた美姫(みき)はその出自ゆえに苦労が絶えない。そんな彼女が出会ったのは同じく出自が奇妙な男、桃井であった。
寿限無から始まる長い名前を付けられた主人公に子供が生まれ、名を付けることになった。自分と同じ苦労は掛けぬよう、自分自身の人生を振り返り、名前の意義を考える。どういう名前が幸せになるのか?自分は今幸せなのか?親から込められた思いを感じ取り、二人は子供への思いを書き出していった。
父が倒れたという知らせを受けた弥次郎は、生家のある横田へ向かう途中、山道を近回りしようとして道に迷ってしまう。日も傾き、驟雨に打たれて窮した弥次郎は山間の屋敷に辿り着く。宿をとることができた弥次郎だが、この屋敷に住む夫妻の秘密を知ることとなる。
今夜自ら命を絶とうとしている男。彼は偶然耳にした“お戒壇巡り”に心惹かれ、深夜の善光寺に忍び込む。体験したことのない暗闇の中で、男は誰かに出会う。相手の正体も知らぬまま、“極楽の錠前”を探し始める二人の話。