『意地悪なお姉さん』
鷹村仁
(『シンデレラ』)
父が再婚した。反対はなかったが気に入らない事が一つあった。それは再婚相手の連れ子が美人で真面目である事。非の打ちどころがない。そして運の悪い事に同じ人を好きになってしまう。
『謎のパスモ』
太田純平
(『謎のカード』)
ホームに美女が立っていた。見惚れていた俺は、彼女が電車に乗る直前に何かを落とした事に気付いた。パスモだ。俺は拾って彼女に届けようとしたが、すんでのところで電車が行ってしまった。仕方なくパスモを駅員に届けると、何故か警察署に連行されて、尋問を受けるハメに――。
『平成 牡丹燈籠』
サクラギコウ
(『怪談 牡丹燈籠』)
噺家の囃子亭菊輔のもとに萩原新二郎という若者が訪ねてくる。弟子入り希望だった。弟子は取らないと決めている菊輔は一計を案じ、1週間で「牡丹燈籠」を噺せるようになったら弟子にしてやると答える。ほんの思い付きだった。若者の名前が牡丹燈籠に出てくる男の名と酷似していたからだ。だがこれがとんでもない不幸を呼ぶことになる。
『ちょろきゅう』
太田純平
(『たのきゅう(民話)』)
「ちょろきゅう」というキラキラネームの中学生が、カツアゲ目的のヤンキーに絡まれる。ひょんな事からヤンキーの苦手なものがチョコレートだと判明するが、ヤンキーは「自分だけ弱点を知られるのはフェアじゃない」と、ちょろきゅうに苦手なものを訊く。
『千年カグヤ』
柘榴木昂
(『かぐや姫』)
人々が世界管理システム「オルテースス」に日常を預け、エッグスとよばれる仮想空間ポッドで生活するようになって久しい。そこには現実世界にあるもの、ないものすべてが備わっているからだ。
『鰐梨』
黄間友香
(『夢十夜』『檸檬』)
私は自分の胃から花が咲く夢を見る。胃がキリキリとするということでは就職活動で痛めた現実の自分の胃と似通っているが、内容自体は全くファンタジックなものだった。だが、面接のある翌日に久しぶりに胃痛から解放されて爽やかな朝を迎える。意気揚々と準備を始めた私だったが……
『さいごのひとはな』
菊野琴子
(『さいごのひとは』)
花の色すら知らない男と、花の色しか知らない妻。偏った愛で互いを心から想うがゆえに、二人は蝕まれていく。別々のものを映すふたりの目が、闇夜の果てに見たものとは―――。この世界を埋め尽くす希望が咲き誇る。