『粗忽なガーヤ』
佐藤邦彦
(『粗忽長屋』)
時は未来。火星ツアーの懸賞に当選した熊五郎。何とか会社を休んでツアーに参加できないものかと兄貴分の八五郎に相談すると、紹介されたのがガーヤ研究所。ここでもう一人の自分を作成し、代わりに仕事をさせることとし火星ツアーに出掛けるが……。
『影』
広瀬厚氏
(『草枕』)
写真家の小野は日常の煩わしさから逃れるのを目的に、カメラを一台肩から下げて、しばしば見知らぬ街へとふらり旅ゆく。今回これと言った特色のない街へ訪れた彼は、成りゆきから母と娘の二人で経営する小さな旅館に宿泊する事となった。娘の名は良子と言って朗らかで綺麗な女性だった。
『お皿は何枚』
三谷銀屋
(『番町皿屋敷』)
秋山家で女中奉公をするお菊は、主人の秋山主馬が大切にする家宝の皿をうっかり割ってしまう。短気で怒りっぽい秋山に知られたらお菊は手討ちにされてしまうかもしれない。途方に暮れるお菊の夢に不思議な童子が現れる。童子はお菊の窮地を助けてくれると言うが……。
『カサジゾウ、的な何か』
柿ノ木コジロー
(『笠地蔵』)
山間の限界集落、三人の息子も帰ってこない年の暮れ、ばあさんとふたりきりで暮らすじいさんは、わずかな稼ぎ欲しさに菅笠を編む。あまりの出来のよさに自信たっぷりに街まで売りに行ったは良かったが……小さな命の声が聞こえてしまうというじいさんに起きた、失意の出来事とささやかな奇跡。