『アラウンド・ミッドナイト』
もりまりこ
(『文鳥』)
ある日、俺はひとり、<虹の橋>近くの観覧車に乗ってみることにした。座席をみると、誰かの忘れ物のように箱がぽつんと置いてあった。それは、危険ななにかなのかかもしれなかった。箱に耳をちかづけて、秒針の音がしないか確かめてみることにした。時を刻む音の代わりに聞こえてきたのは・・・。
『やまなしの夜』
星谷菖蒲
(『銀河鉄道の夜』『やまなし』『押絵と旅する男』)
気が付くと、銀河鉄道に乗っていた。あどけなくもどこか大人びた少年と、煌く銀河を旅してゆく。供は一枚の押絵。そして甘く、芳醇な香りが、銀河の底を叩いて記憶を呼び起こした。
『神聖なる』
伊藤なむあひ
(『浦島太郎』)
夏休み、自由研究の課題に追い詰められた僕たちはおもちゃ屋に向かい神聖なるそれを万引きすることを決意した。僕たち四人のうちのひとりは神聖なるそれを使い過ぎて死んだ。今回もまた、おもちゃ屋でひとり、公園でひとり死に、残されたのは僕だけだった。