『メリーさんの涙』
桝田耕司
(『メリーさん、口裂け女』)
メリーさんは電話をかけますが、次々と移動する男に振り回され、あきらめます。スマホに八つ当たりしようとして、思いとどまりました。黒電話のころを懐かしみます。口裂け女に会い、ビールをおごってもらいます。慰められますが、その変貌にショックを受けて泣きました。
『桜の木の下には』
藤野
(『桜の樹の下には』)
僕はある日小さな喫茶店を見つける。蔦に囲まれて入り口すら見つけにくい喫茶店は、すべてのメニューが文学作品のタイトルになっていた。興味深いタイトルに惹かれて、どれを注文しようと悩んていたら、一組の男女が「桜の木の下に」を注文した。彼らが注文した後……。
『人魚』
末永政和
(『月とあざらし』小川未明)
北方の海に浮かぶ氷山の上で、子をなくした人魚が悲しく歌い続けていた。人魚は永劫に歌い続ける呪いを自身にかけていた。氷山はそれを見かねて、或る晩、月と風とに願いを託す。
『白雪姫前夜』
伊藤なむあひ
(『白雪姫』)
山で道に迷った男がたどり着いたのは『世界の真理を追求する芸術家の集い』と書かれた看板の先にある奇妙な家と、そこに住む七人の芸術家、そしてひとりの女の子だった。『小柄な小学生なら一人くらいは入りそうな大きさのトランク』は喋るのを止め、女の子は継母を求め一人去ってしまう。
『白昼カワイイ』
柿沼雅美
(『白昼夢』)
友達は私のことを大人しくて普通の子、と言ってくれるでしょう。その通りです。私の父は今朝公園で演説さながら、母を屍蝋にしたと告白していました。母に会ったことはありませんが、カワイイ蝋細工なら知っているような気がしたんです。