『踊る井田の花』
ノリ•ケンゾウ
(『小さなイーダの花』)
井田ちゃんの花が踊る。幼い頃、どこの学校にでもあった本当か嘘か知れない噂話のようなもの。成人を迎えた後、開かれた同窓会でふいに話題に上った「井田ちゃんの花が踊る」という話から、「私」は小中の学校生活に思いを巡らせていく。過去と現在が曖昧になり、段々と蘇っていく記憶……。
『白雪姫の遺言』
日野成美
(『白雪姫』)
なぜ白雪姫はたった七歳で世界一美しいと言われたのか? 狩人を眩惑して魔の手を逃れた白雪姫は、小人にかくまわれて育つ。毒のりんごで殺された後、死人のまま王子に愛されて生き返った。婚礼の席で女王を焼けた鉄の靴で殺した白雪姫だったが、女王は臨終の言葉で白雪姫の「正体」を明らかにする。
『不毛な愛を求める子供』
月崎奈々世
(『ヘンゼルとグレーテル』)
美緒は、酒癖が悪くだらしない母親を憎んでいる。幼い弟の帰りが遅いことを心配して、探しに行こうと家を出ようとした時、母親からかけられた言葉は「このまま帰って来なければいいのに」。美緒は思う。こんな奴、早く死ね、と。そして母親の言葉通り、美緒は弟と共に、不穏な女に誘拐されてしまう。