『お留守番』
大場鳩太郎
(『オオカミと七匹の子ヤギ』)
優しい母親と二人で暮らす「ぼく」の唯一苦手なことは留守番だ。ある日、しゃがれた声で『お母さん』だと名乗る男が家を訪ねてきた。その日はあっさり追い払えたが、翌日の同じ時刻に、再びチャイムが鳴った…
『かっぱちゃん』
うざとなおこ
(『河童伝説』)
かっぱちゃんと一緒に過ごした一夏の思い出。泳いだり、ザリガニとったり、山びこ合戦。一緒に大きな声で笑った。お父さんも、おじいちゃんも昔かっぱちゃんと遊んだらしい。そして、夏休みの最後の日がきた。
『サルの夢』
山本康仁
(『猿蟹合戦』)
私はまた、サルの夢を見て目を覚ました。ここ一週間その夢ばかりだ。小学五年生の夏に転校してきた彼女。猿の物真似が上手かったからサル。あっという間に人気者になった後、同じスピードで悪意が集まった。私は何もやっていない。
『の、あとで』
平井玉
(『桃太郎』)
鬼ヶ島での決戦後、故郷の猿山でボスに君臨する猿は、新世代の台頭に悩まされている。一方、犬は恵まれながらも不本意な暮らしを送っていた。彼らが共に浸るのは、“あの頃”の思い出だった。
『わらしの思い出』
岡田千明
(『座敷童子』)
都心を離れ、田舎暮らしをはじめようとする夫婦。訪れたのはかつて夫の祖父母が暮らした土地だった。不動産屋に案内された家からは、どこかぬくもりを感じる。彼はその夜、久しぶりに母に電話した。
『笠地蔵(?)の恩返しっ!』
城山秋月
(『笠地蔵』)
化け術が苦手な狐のイチには、人間の友達がいる。中でも大好きなのが孝。ある日、孝を驚かせようと道端で地蔵に化けてみたものの、大雪に遭ってしまう。寒くて声も出ないイチ地蔵に、通りがかった孝は…
『蟻と蟻』
行李陽
(『鶴の恩返し』)
青年は帰宅途中、罠にかかった鶴を見つけ、助けた。そして家路を急ぐ。すると、また鶴が。再び助けてあげる青年。しばらく歩く。さらに鶴が…青年は罠を解く。吹雪となったその夜、彼の家を訪ねてきたのは…
『ガラス製品なので大変割れ易くなっております』
五十嵐涼
(『シンデレラ』)
“魔女の部屋”で買ったガラスの靴を履き、割れた破片で足が血まみれになった女子高生。小柄な彼女の体重は80キロオーバーだ。金を返せと怒鳴り込むも、“魔女”の方が何枚も上手だった。
『菊見の頭巾』
平井玉
(『聞き耳頭巾』)
十歳になった澪の目標は、努力しないで一生暮らしていくこと。じいちゃんはそれを聞いて喜び、澪に赤いベレー帽をプレゼントした。いつもじいちゃんが被っていた帽子だ。実はそこには不思議な力が宿っていたのだった。