『銀河夜行バス』
Mac
(『銀河鉄道の夜』)
ある女性が宇宙旅行へ行くが、事故のため宇宙をさまようこととなる。しかし宇宙ではバスが運行されており、彼女は天の救いとそれに乗り込む。バスの前のボタンを押すと食事が提供されるのだが、横にいた宇宙人がボタンを押すと、新たに一人の宇宙服を着た人間が乗り込んでくるのであった。
『吉住町』
ノリ・ケンゾウ
(『猫町』)
医師の勧めにより温泉のある街で療養中の詩人は、健康的な食生活こそが自分を救うと信じて、アルコールも煙草も断った。処方された薬と、散歩を繰り返す日々の中で、詩人の迷い込んだのは、「吉住」ばかりの住む不気味な街であった。現実の世界と幻想を行き来する詩人に、多大なる敬意を表して。
『私だけのエナメル』
柿沼雅美
(『赤い靴』)
大学生の由実は、就職について考えながら自分は一体何をしてきて何をしていきたいのだろうと考えていた。高校時代のように好きなことをしていいのかと思いながらも躊躇する。家に帰ると、今夜も母親が人形をベッドに寝かせ、撫でながら「由実」と呼んでいた。
『千鶴残酷物語』
hirokey
(『鶴の恩返し』)
現代のあるところに、とても美しい鶴がいました。罠にかかっていたところを通りすがりの男に救われた彼女は、姿を人間の乙女に変えて、男の家を訪ねます。男は優しさだけが取り柄の人間でした。そんな男に恋をしてしまった彼女は、報恩の枠を超えて男に尽くすようになり……。
『金太郎の恋』
露風真
(『今昔物語』)
源頼光の家来の四天王たちの物語である。頼光には美しい姫がいた。その姫を四天王たちは恋していた。中でも金時は純な恋心を持っていた。彼はある日、姫が賀茂の祭りの行列を見に行くことを聞いた。そこで貞光、季武と語らって牛車を女車に仕立てて乗り込み、祭り見物に出かけて行く……。
『悪鬼』
田向秋沙
(『長谷雄草紙』)
紀季雄は朱雀門で出会った男と、禁制の賭博である双六に興じることになった。男の正体は鬼であった。勝負に負けた鬼は、百日間手を触れてはならぬという戒めとともに美しい女人を差し出した。しかし堪えきれない季雄は、八十日ほど経った頃に手を触れてしまう。すると女人の姿は消えて……
『次は、』
氏氏
(『百物語』)
むかし、むかしの、山中のある農村でのはなし。秋が近い夏の夜。村の人々はお寺の本堂に集まり、怖い話を語り合っていた。明かりはロウソクのみ。「100つの話」という約束のもと、老若男女が次々と語っていく。順番に話していく村人たち。次は、5歳に満たない女の子・さきが語り始める。
『シャーロットの日記』
朝蔭あゆ
(『浦島太郎』)
おばあさまの訃報を受けて、私はママと田舎の家に行く。そして、“シャーロット”という文字の入った黒い日記帳を見つけた。ついに一度も会うことのなかったおばあさまと私は、同じ名前だったのだ。ページをめくると、小さな少女が私の前に現れる。時を越えた友情は、夢から覚めても永遠だった。