『スキル』
わろし
(『史記 孟嘗君列伝』)
紀元前四世紀末、春秋戦国時代の中国は、乱世に割拠する斉の国。一芸あれば誰でも雇う評判の親分・孟嘗君のもとに、男がひとりやってきた。まったく役にたたないスキルを披露するその男は、意外な素顔をもつ孟嘗君の窮地を“役に立たないスキル”で救うことになる。
『吾輩は坊ちゃんである』
太郎吉野
(『夏目漱石『吾輩は猫である』『坊ちゃん』『こゝろ』『三四郎』)
吾輩は坊ちゃんである。名前はまだ無い。親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている。無鉄砲に加えてこれも親譲りの短気である。生来の無鉄砲と短気とそそっかしさから、人助けのつもりで奸物の教頭とその腰巾着の美術教師をぽかりとやった。
『姫とHIME』
NOBUOTTO
(『かぐや姫』)
ある惑星の研究者スコット博士とジェシーは、地球人の感情を分析するためにアンドロイドSG10を地球に送り込んだ。SG10は「かぐや姫」と地球では呼ばれ、研究室では「HIME」と呼ばれ研究は開始された。そして「かぐや姫」は惑星の人間が無くした感情を蓄積していくのであった。
『縁日の怪人』
小笠原幹夫
(江戸川乱歩『少年探偵団』)
毎年お盆の十三日には、ホウロクをそれぞれの家の前の軒下に持ち出し、オガラを積み上げて迎え火を焚きます。十六日には、ふたたびオガラを用意し、送り火を焚きます。この明かりを提灯代わりに、御先祖様がこの世に帰ってきて、三日後にまたあの世にもどっていくと言い伝えられているのです。
『おばあちゃんと少年』
升田尚宏
(『ごんぎつね』)
静かな山間の村で一人寂しく暮らすおばあちゃんの家に泥棒が入る。泥棒が子供か少年だと解ると、おばあちゃんはなぜか少年を捕まえようとせず、また泥棒に入るなら入りなさいと言わんばかりに金や野菜を置いておく。おばあちゃんの真意が解らず、少年は怖くなって逃げ去る。おばあちゃんの真意とは…。
『評論といふもの』
遠藤大輔
(芥川龍之介『沼地』)
とんでもなく面白い芝居に出会った。演劇評論家の私は、この感動を分かち合いたいと、終演後のロビーである男に話しかける。しかし男は「駄作だった」と言う。私は傑作であると主張するが、その理由をうまく説明することができない。男は、それこそがこの芝居が駄作である何よりの証拠だと言う。
『トロフィー・ワイフ』
村越呂美
(『飯食わぬ女房』)
友人の木原は裕福で、ハンサムな男だ。彼との結婚を望む女性はたくさんいたが、40歳を過ぎても木原は独身生活を楽しんでいた。その彼が44歳でついに結婚した。しかし、その直後彼は、行方不明になってしまった。
『レーヴレアリテ』
柿沼雅美
(『フォスフォレッスセンス』)
女の子二人の会話を聞きながらポテトを食べる僕。パソコンでアニメを見る僕。部屋の窓から見えるおじさんを毎日見る僕。夢の中には絵理香という彼女がいて、人から喜ばれる仕事をしている僕。嘘も本当も、夢も現実も、僕には同じだった。