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『私のささやかで大切な変身』真銅ひろし

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 けれど時間が経っても清水さんの言葉が頭から離れなかった。仕事の問題は仕事でしか解決しないと思うけれど、その入りの部分で気分を変えるのは大事かもしれないと思い始めた。
 なので、思い切って変えて見る事にした。いつまでもうじうじ落ち込んでもいられないし、もし染めてみて失敗すればやめればいいだけの話だ。
「シルバーでお願いします。」
「分かりました。」
 清水さんは深く理由は聞かずに軽く微笑んで、作業に取り掛かってくれた。
 人生初めてのシルバー。
「・・・。」
 もっと徐々に変えていけば良かったんじゃないか・・・。
 会社の人間に変に思われるんじゃないか? 
 上司に怒られたらどうしよう・・・。
 染めてもらっている間もあれこれ考えてしまう。
 けれど、そんな心配も出来上がりを見た時は一瞬どこかにいってしまった。
「・・・。」
 注文した通りの綺麗なシルバーの髪色が出来上がっている。
「どうですか?」
「・・・いや、ちょっと衝撃ですね。」
「実際にやってみると結構驚きますよね。」
「はい、ものすごく・・・。」
 見たことがない自分が鏡に映っている。似合っているかいないかはよく分からず、ただただ違和感しかなかった。
 これで明日から会社に行くのか・・・。

 そして案の定、社内はちょっとだけざわついた。
「・・・。」
 みんな私を見るなりギョッとした表情を見せる。
「どうした?」
 がほとんどの反応。
「・・・気分転換です。」
 変に嘘をつく必要もなかったので、そのまま伝えた。
 けれどギョッとする人ばかりではなく、「良い色だね」と言ってくれる人もいたり、「似合ってるね」と言ってくれる人もいた。
「・・・。」
 出社する前はとても不安だったけれど、来てみれば思った程ではなくて安心した。
 そして、心が少し高揚していている自分がそこにいた。
 何がどう変化したのかはっきりと言えないけれど、確実に言えるのは昨日の私とは違う気分の私がいる。
 そう・・・それだけで充分だ。

 やって良かった。

 それが素直な感想。
 こんなちょっとした事で気分が上がるなら髪を染めるのは決して無駄じゃなかったと感じる。

―――――というのが染めるのが習慣になったきっかけ。

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