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『シャンプー』Chappy

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 私は会員カードを手に愕然とした。
「田中さんって、小樽市の森野中にいらっしゃいました?」
「え…」
 田中君は一瞬怪訝な顔をしてこちらを観た。瞬間的に目つきが悪くて、昔の田中君を髣髴とさせた。
「そうですけど、知り合いでしたっけ?」
「はい、私同級生の山内です」
 田中君は少し考えたような顔をしてから、
「あぁ、ごめんなさい。覚えてないや。俺すぐ忘れちゃうんですよ」
 と薄く笑った。
「あ、そうなんですか」
 私はいささかほっとしつつ答えた。
「東京で会うなんてびっくりですね」
「あぁ、確かに」
 田中君が言葉を短く切って早く立ち去りたそうに店の外をちらっと見たので、私はそれ以上話を広げず会計をした。田中君を見送る時、もう来ないかもな、と思った。田中君は過去を知っている人に会いたくないのかもしれない。
 田中君は中学時代、とても有名なヤンキーだった。田舎のヤンキーらしく金髪・リーゼントで、校庭で打ち上げ花火をしたりやることも派手だった。授業にはほぼ出ずに遊んだりバイトをしたりしていて、中学三年の時には年上の女の人と同棲しているという噂が立っていた。そんな田中君が私のことを認識していないのは無理のない話だった。私はスクールカーストの最下段にいて、いじめられるのが嫌だからなるべくほかの人に意見を合わせて目立たないようにしていたからだ。
 久しぶりに会った田中君は黒髪・短髪に黒いスーツという非常に普通のいでたちだった。雰囲気もふわふわしており昔のギラギラした感じが抜けている。なんで私が田中君に気付いたかと言うと「田中明日」と書いて「たなかともろう」と読む、若干のキラキラネームの為だ。本当は私自身が会いたくない同級生に声をかけたのは、同一人物なのか確かめたい好奇心が勝利したと言える。

✂

 予想は裏切られ、田中君は1か月後に再度来店した。私は受付で薄手のコートを受け取りながら、田中君のことをちらりと見た。田中君は少しにやりと笑った。1か月分髪は伸びているが、きちんとセットされており、グレイのスーツを身にまとっている。
 田中君の散髪後に会計をしていたら、
「山内さんはここで働いてるんですか?」
 と声をかけられた。
「そうですよ」
 答えながら、どういう質問なんだよ、と心の中でつっこんだ。なんで働いていない人がここで受付をしているんだ。
「お会計係さん?」
「いや、美容師なんですけど、まだこの店入りたてだから日中はお会計とかいろいろお手伝いして、夜カットとかパーマとかスタイリングとかの勉強をさせてもらっている感じですね」
「こんなおしゃれな店で働いていてすごいね」
「いやぁ…」

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