「そんなことないよ」
「そうなんだ。じゃあ飼えるの?」
「代わりに飼ってくれそうな人を知ってるの」
私はそういって袋を目の前からさげると、その瞬間、夜空に金色の花火が打ちあがった。私たちは空を見上げた。そしてそっと横にいる彼女の様子をうかがうと、彼女も同じようにこちらをうかがっていた。目が合って控えめに笑いあった。
「去年は散々だったよ」
彼女はぽつりとそうつぶやいた。私は相槌を打つ。そして私が彼女の代わりに言葉を続けた。
「あのさ、私、すこし素直になったかもしれない」
「そうかもね。随分変わったよね」
私はうなづいた。彼女の横顔を赤や青の光が照らしていった。
「私、変われてよかった。先輩に告白されてもうれしくなかったけど、いまは先輩といれてうれしい」
彼女がすこし苦しそうに「そっか」と言った。そして続きを話した。
「でも、あたしもまた人が好きになれたの」
「うん。わかってるよ。すごくいい表情してるから」
彼女はそういわれると花が開くようにはにかんだ。その笑顔が好きだった。
「髪、似合ってるよ。すごく」
彼女が自分のおでこをちょんちょんと指差した。そっと前髪を押さえながら目線を上にあげると、濃紺の空に花火が上がっては消え、金色の輝きが次々に空を泳いでいった。