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『シンクロニシティ』雫石つみき

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 私の日常としては、四週間程に一度、カット&シャンプー・ブローのために美容室に通うという行動があった。
「あぁ、また新しい美容室を探さないと」
 私はやや面倒くさいという思いを抱きながら、近所の美容室情報を検索することにした。関西の私が住む地域は美容室激戦区と言えるほど美容室が多く、最寄り駅を挟んで南側と北側とに二十以上の美容室が近距離で存在していた。
 私は次の新しい美容室として、シャギー(カット)が売りという『シエロ』という美容室を直感で選定し、予約を入れた。私は初予約であったため、担当は電話を受けた田辺優美という当時二十七歳の女性スタイリストになった。

 彼女と別れ、美容室の担当スタイリストがいなくなり……、だが、そんな私にもまだ恋の雫は残っていたようである。
 不定期ではあるが飲み仲間の一人である大山香菜と飲んでいた時である。大山香菜とは講習会で知り合い、東北という同郷ということで距離が縮まり、飲み仲間となった年下の女性である。
「今日から僕の彼女になってよ」
 アルコールが入っていたとはいえ、私は自身の淋しさを埋めるように大山香菜に甘えて言ってしまった。
「えっ……いいですよ」
 大山香菜の返事にはほんの少しの間があったが、大山香菜は嬉しそうな表情を浮かべて私を見ていた。大山香菜は、アルコールは摂っていない、ノンアルコールのモヒート一杯だけである。そのような素面の大山香菜の「いいですよ」という言葉に甘えていた私だった。
 そんな軽い感じで私は大山香菜と交際することになった。交際当初、私と大山加奈は食事や映画、遊園地など定番のデートを重ね、恋人のようであった。だが、淋しさを臨時で埋めただけのゲームのような恋の行方など長続きするはずもなく、一年程で大山香菜は私の前から去っていった。大山香菜が他に好きな人ができたとのことだったが、また今回も私の不甲斐なさが原因だろう。だから私は特に大山香菜に対して深追いはしなかった、そんなものである。
「彼女との別れか、もしかしたらまた美容室のスタイリストが……」
 そのような妄想が私の頭の中を過っていた。
 辛いことがあろうと、苦しいことがあろうと髪は伸びるものである。また逆も然り、嬉しいことがあっても、楽しい日々であっても髪は伸びるものである。人として成長などしていなくとも、髪は成長し、伸び、頭全体の髪のボリュームが増えていく。それが現実の日常というものである。
 大山香菜と別れて二週間ほど経った頃だろうか。六月中旬の土曜日、予約していた美容室『シエロ』でのカット&シャンプー・ブローの日である。この『シエロ』という美容室も通い始めて約一年になる。
 いつも通り、担当スタイリストである田辺優美との雑談が進む中で私の髪はカットされ、適度にシャギーも施されてちょうといい感じに仕上がっていた。正直言って、今までの美容室(スタイリスト)の中では一番いい感じに仕上げてくれていた。
 担当のスタイリストである田辺優美がレジでの精算を終え、私の次の来店予約を確認し始めた時である。
「日村さん、次はいつにされますか? 」
「んー、七月はこの日でお願いします」
 私はタブレットに表示された七月のカレンダーの第四土曜日を指さして指定した。この時までは私は、当然次も田辺優美がカットしてくれるだろうと安心していた。ところがである。

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