メニュー

  • トップ
  • 受賞一覧
  • 映画化一覧
  • 作家インタビュー
  • 公募中プロジェクト
  • 創作プロジェクト
  • お問い合わせ
               国際短編映画祭につながる「ショートフィルムの原案」公募・創作プロジェクト 奇想天外短編映画 BOOK SHORTS

\ フォローしよう! /

  • トップ
  • 受賞一覧
  • 映画化一覧
  • 作家インタビュー
  • 公募中プロジェクト
  • 創作プロジェクト
  • お問い合わせ

『初めての美容室』朝森乙晴

  • 応募要項
  • 応募規定

 鏡で確認してわたしは、
「もう少し、切ってもらってもいいですか?」
「了解!」
 そう言って尚子さんは、ハサミを握りなおした。真剣な顔つきに戻り、わたしの髪の毛を再び切り始める。
 全体のスタイルが整ったようで、次は前髪だ。
「あまり短くない方がいいかな?眉が隠れるあたりくらいでどうかな?」
 また、尚子さんが確認してくれる。
「はい、それぐらいでお願いします」
 前髪は、お母さんが切るいつもと同じぐらいの長さにしてもらった。
 尚子さんのハサミが近づいてきて、わたしは目を閉じる。ハサミを縦に使って、細かくハサミを入れていく。鼻のあたりに落ちてくる髪の毛がくすぐったい。
「カット、終わったよ!一度流して、乾かそうか」
 そう言って私の顔とクロスの髪の毛を払うと、尚子さんはクロスを外してくれた。床にはたくさんの髪の毛が落ちていた。
「こんなにたくさん切ったんだね」
 床の髪の毛を見て、わたしは少し寂しい気持ちになったが、自分の頭の軽さにも驚いた。
「できたよ!」
 ドライヤーのスイッチを切った尚子さんが、鏡の中のわたしに微笑みかけた。
「とってもかわいいよ!」
 生まれて初めてのショートカットの自分から目を離せないわたしに、尚子さんはそう言った。ソファに座って雑誌を読んでいた詩織先輩も、わたしの傍にやって来た。
「美穂ちゃん、かわいい!とっても似合っているよ!!」
そう言ってくれた。お世辞でもうれしい。
「これで、バドミントンもじゃんじゃんできるね!」
 そうも言ってくれた。
「よろしいでしょうか?」
 尚子さんが鏡の中のわたしに最後の確認をする。
「はい。ありがとうございます!」
尚子さんの言葉に、わたしはそう答えた。
「こちらこそ、ありがとね!美穂ちゃんの初美容室と初ショートカットのお手伝いさせてもらったこと、わたしも本当にうれしかった!」
 尚子さんはそう言ってくれた。
「じゃあ、次は、詩織ちゃんね」
「はい、よろしくお願いします。」
 そう言った詩織先輩と、わたしは交代。今度はわたしが、ソファで先輩を待つ番だ。尚子さんは、詩織先輩をシャンプー台へ案内した。
「家に帰ったら、お父さんとお母さんはなんて言うかな…。紀ちゃんはびっくりするだろうな…。でも、『かわいい!』って言って、また頭を撫でてくれるんだろうな…」
 思わず笑みがこぼれた。
 初めての美容室には、優しい美容師さんがいた。緊張を少しずつ解きほぐすように、わたしの話を聞いてくれた。一つ一つ確認しながら、わたしを大切なお客さんとして扱ってくれた。尚子さんじゃなかったら、今日のことはもっと違う体験になっていたかもしれない。
 シャンプーを終えた詩織先輩の髪の毛を、尚子さんが切り始める。
「次は一人で来てみよう…。尚子さんとももっといろいろ話したいな…」
 真剣な眼差しで、詩織先輩の髪の毛を整えていく尚子さんを見つめながら、わたしはそう思った。

4/4
前のページ

第2期優秀作品一覧
HOME

 

             

               

■主催 ショートショート実行委員会
■協賛 株式会社ミルボン
■企画・運営 株式会社パシフィックボイス
■問合先 メールアドレス info@bookshorts.jp
※お電話でのお問い合わせは受け付けておりません。

1 2 3 4
Copyright © Pacific Voice Inc. All Rights Reserved.
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー