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『初めての美容室』朝森乙晴

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 わたしは、小学6年生。もうすぐ中学生になる。
 中学生になるのは、とても楽しみだ。勉強は難しくなるって聞くけれど、何よりクラブ活動がある。今までは、週に1回だけスポーツ少年団でやっていたバドミントンが、毎日できる。それがとてもうれしい。
「美穂ちゃんも、もう中学生になるのね。この間生まれたばっかりなのに…」
 入学祝いを持ってきた紀ちゃんが言った。紀ちゃんは、お父さんのお姉さんだ。わたしの伯母にあたるが、「紀子おばさん」とは一度も呼んだことがない。
「髪の毛は切らなくてもいいの?」
 髪の毛を背中の真ん中まで伸ばし、いつもゴムで一つに括っているわたしに問いかけた紀ちゃんに、
「いつの時代のことだよ、姉ちゃん。髪の毛を短くしないといけなかったのは、もうずっと昔のことだよ」
 そう言ってお父さんが笑った。なんでも、お父さんと紀ちゃんが中学校に通っていた頃は、男子は丸刈りで、女子は肩までしか髪を伸ばしてはいけなかったらしい。
「へー、そうなんだ。そりゃこのご時世では、髪の毛の長さまで校則で決めてるなんて、マスコミにたたかれそうだわね」
 紀ちゃんもそう言って笑った。
「クラブはもう決めたの?」
「うん、バドミントン部!早く毎日やりたいよ」
 そうわたしが答えると、紀ちゃんは、
「そっかー。いいわねー。楽しみね!」
 そう言って、わたしの頭を撫ででくれた。紀ちゃんはいつもわたしに会うと、わたしの頭を撫ででくれる。
「もう中学生なんだけどなー」
 と思いつつも、紀ちゃんがそうしてくれるのが、わたしは好きだ。
「美穂ちゃんは、きれいな髪の毛ね。長い髪は女の命っていうから、大事にしなさいね」
「姉ちゃん、それも時代錯誤だよ」
「そりゃ、そうだね!」
 紀ちゃんとお父さんは笑った。

 中学校の入学式も無事に終わり、わたしの中学生活が始まった。わたしは迷うことなく、バドミントン部に入った。近所に住んでいる一つ上の詩織ちゃんも、バドミントン部だ。いつも、「しーちゃん」と呼んでいたが、もうそうは呼べない。「しーちゃん」は、「詩織先輩」だ。
「美穂ちゃん、バドミントン部に入ってくれるんだね。また一緒にバドミントンができて、うれしいよ!」
「うん、わたしもうれしい!じゃ、なかった。はい、うれしいです、詩織先輩!」
「もう、美穂ちゃんったら。二人の時はいいよ、しーちゃんで!」
 詩織ちゃんはそう言って笑ってくれた。
「だめだよ…。じゃなかった。だめですよ!先輩なんだから」
 なんだかおかしかったけど、でも、しーちゃんと一緒にまたバドミントンができることはうれしい。
「そうだ。詩織先輩、髪の毛短くしたんだね」
 先輩と呼びつつも、詩織先輩に対して敬語で話すのは、なかなか難しい。
「あっ、これ?クラブで毎日動き回って汗かくから、短くしたの。ずっと長くしてきたからどうしようかなってちょっと迷ったけど、切ってみると楽で。髪の毛洗うのも乾かすのも超楽だよ!」

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