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『幸ウンの白い鳩』白妙スイ

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 歩きながら、俺ははっとした。
『髪が綺麗になった……いえ、あなたに出会えただけで、ウンなんてもうじゅうぶんつきましたよ』
 遅ればせながらこんな台詞を思いついたのだ。
 爽やかな笑顔でそう言えば、カッコ良かっただろうかと思った。
 が、それはすぐに却下した。
 格好をつけるにはダサすぎる一連の出来事。
 あのあとで格好をつけたってギャグだ。
 まぁ、そんなカッコいい台詞を吐くのは後日でいい。
 シャンプー代は払ったが、なにかお礼の菓子折りでも持っていかなければ。あれだけ色々してもらって。オープン前に仕事までさせてしまって。菓子でも釣り合うかどうか。
 駅に入りつつ、俺はお礼をなににするか、色々画策をはじめた。
 何故か、今からどきどき胸を高鳴らせながら。

 
 それから。
 俺の帰宅定番コースは少し変わった。
 駅の反対側に寄るようになったのだ。
 彼女の勤める美容室があるところ。
 鳩のフン事件から数日後、俺は菓子折りを持って美容室を訪ねていた。
 彼女はちょうど店にいて、そして俺を覚えてくれていて、「ああ、先日の!」と言ってくれた。
 そして俺の渡したお礼の菓子折りをとても喜んでくれた。
「えー、ここのバウムクーヘンとっても好きなんですよ! ありがとうございます!」
 どうもアタリを引けたらしい俺は嬉しくなってしまい、勢いに乗るように言っていた。
「良ければ今度、お茶でもどうですか。駅ビルの上の階に日本茶カフェができたんですよ」
 そんなこと、相手によっては『一回、親切にしただけなのに図々しい』と言われてしまったかもしれなかったけれど、幸い、彼女はそうは取らなかったらしい。
「あ、あそこですよね! あんみつが美味しいっていう……行ってみたいと思ってたんです!」
 なんとこちらもアタリであった。俺が歓喜したのは言うまでもない。
 それからとんとん拍子にことは進み……たった半月ほどで、恋人関係になれたのである。
 俺は心底、神に感謝した。
 彼女はオシャレで、かわいらしくて、洗練されていて、でもどこか豪快で親しみやすい、とても魅力的な女性で。
 でもそれだけではなく、駅で困っていた俺を見過ごせずに声をかけてくれた、とても優しいひとなのだ。
 そんなひとが恋人になってくれた。
 これ以上の幸せはないだろう。

 
「待たせちゃったかな」
 ある夜、仕事終わりにカフェでコーヒーを飲んでいた俺は、明るい声をかけられて顔をあげた。
 そこには茶色の髪をサイドでまとめて、今日はピンク色のワンピースにカーディガンを羽織った彼女がいた。
 あれから一ヵ月ほどが経ち、春は終わろうとしていた。服装も夏に近付いていく。
 かけられた声に反応して、俺は「いいや」と笑みを浮かべた。
 彼女は、ほっとした様子で俺の向かいの席の椅子を引いて、腰掛ける。手にはカウンターで注文したらしきアイスティーのグラスを持っていた。

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