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『牡丹の匂い』柿沼雅美

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「絵美里ちゃんはかわいいよ」
 私が言うと、いやいやいやいや、と手を顔の前でブンブン振った。
「咲さんもかわいいですよ」
 いやいやいやいや、と私も同じように手をブンブン振って笑った。
「かわいいかどうかは別として、バイトっていうか撮影会なんですよ」
「撮影会!?」
「あれですよ、グラビアとかじゃないですよ」
「なんだぁ」
「さすがにグラビアはないですけど、色々あるんですよ。美容院のカットモデルぽいやつとかはかわいい子多いですけど、うちはコスプレ系です。猫系とかじゃなくて、男の子のコスとかしてマニアさんとかヲタさんが写真撮ってくれるやつですね。衣装とかお金かけたらキリないですけど、うちもともとヲタクなんで作れちゃうし」
 へぇ、と言って想像してみる。
「変なやつじゃないですよ!露出メインじゃないし、スタジオみたいになってるレンタルルームがあって、そこで密にならないように予約制で。最近じゃコスなのにマスクしたままが萌えるみたいのもあって楽しいです」
「へぇ~、向いてそう」
「向いてますかね?でもめちゃ楽しいです。そんなに数ないですけど、1日やって1万円くらいはもらえるんで、助かってます。サークルの子とかとご飯するよりよっぽどリスクないし」
「へぇー、いいなぁそういう向いてるって思えるバイト」
 私が言うと、絵美里はちょっと間を置いて言った。
「咲さん性格めちゃ優しいから人のためになるような何かいいんじゃないですかね。地域貢献みたいな」
「そんなのあるかな?」
「探したらあるんじゃないですかね、こんな時期だし。あ、でも孤独死とか見つけちゃったらトラウマですね」
「たしかに」
「でもマジで、介護とかまではいかないけど見守り隊みたいのありそうじゃないですか?人のためになってお金もらえるとか一番いいじゃないですか」
「たしかに。うーん、ちょっと探してみようかな」
 私が真面目に言うと、絵美里はいつも通り、そっすよ、と軽く言って髪をアイロンで伸ばしていった。

「お邪魔します」
 玄関の引き戸に手をかけると、カタカタ、とガラスが鳴った。築で言うとどのくらいなんだろう、とにかくずっと昔からここに住んでいるのが分かる。
「どうも~」
 ゆっくりと歩いて顔を見せてくれたおばあさんは、曽田ですぅ、と穏やかに言った。90歳近いと聞いていたけれど、顔色もよく、細すぎず、髪の毛も多くはないがふんわりしている。
「曽田さん、はじめまして、よろしくお願いします」
 私がお辞儀をすると、どうもどうも、と言って、曽田さんは家の中に招いてくれた。マスクがズレていないかチェックして、薄い透明のゴム手袋をしたまま手指の除菌スプレーをした。
「今日は何をお願いしましょうかねぇ」
 曽田さんはそう言いながらリビングに向かった。腰が曲がっていて、歩くたびに太ももに手をのせている。自分が中腰のままずっと歩けと言われたら身体が痛くなるだろうと見ていて思う。
「出来ることはなんでも。たとえば、代わりに買い物とか、家や庭の掃除、荷物を運んだりとか、色々」
「せっかく来たんだからお茶でも飲んでゆっくりしたらいいのにねぇ」

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