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『隣の矢吹さん』真銅ひろし

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 部屋の窓に映る自分の髪型を見る。
「・・・。」
 髪にこだわったことなんては一度もなかった。「整えてください」くらいしか言ったことがない。長くも短くもない何の変哲ものない真ん中分け。これからどう変えていけばいいのか全く分からない。
 『モテる髪型』で検索をかけるとたくさん出てきた。
「・・・。」
 テレビに出てきそうなイケメン達が様々な髪型をしている
「・・・。」
 どれがいいのか全くわからない。

 そして何も出来ず、ドキドキする事しか出来ない日々が過ぎる。あの日以来、隣にいるけれど話す事はほとんどない。「おはよう」くらいしか言葉を交わさない。
しかし、今日はいつもとは違った。
「ねえ、黒木さ。」
 学校が終わり、帰ろうとした所で声をかけられた。
「何?」
 一瞬にして体に緊張が走った。
「あのさ、ここ分かる?」
 そう言って矢吹さんは数学の教科書を開いて見せてきた。
「全く分かんないんだよね。」
「え、ああ、一応分かるけど・・・。」
「え!?じゃあまた教えてくれない?!」
「うん・・・いいけど。」
 特に難しくはないところだったけれど、そんな事は口に出さず出来るだけ丁寧に教えた。
「ありがとう!黒木は教えるのうまいね。」
 真っ直ぐにこっちを見つめ、笑顔でお礼を言ってくる。可愛かった。
「あ、ああ、そんなでもないけど。」
 本当は飛び上がるほど嬉しかったが、照れくさく必死で隠した。
 そして矢吹さんは「じゃあね!」と笑顔で帰っていった。
「・・・。」
 元気で明るくて、人気がある矢吹さん。はたして自分がそんな矢吹さんを好きになってもいいのだろうかと不安になってしまった。

「あんた、ちょっと髪切ったら?」
夕飯時、母がこちらの頭を見つめながら言ってきた。
「そう?」
自分ではさほど気にならない。
「今度の日曜に切ってきなさいよ。」
「・・・分かった。」
特に抵抗もなかったので素直に応じたが、少し戸惑った。ネットで見た『モテる髪型』を思い出す。今回も「整える感じ」で済ませるのか?なんの変化もなしにこのまま矢吹さんと隣同士でいいのだろうかと考える。
「・・・。」

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