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『ラヴ・カマタ』ヰ尺青十

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「王貞治な、でっかいホームラン打つだろ」
「うつ」
「あんなの打ったら、外野は捕れないだろ」
「うん」
「すると外野は困るよな」
「・・・」
「だから王は外野に意地悪してんだ、はっは」
「・・・」
 幼稚園児を相手にして、おじいちゃんは生き生きと話し続けた。
 冷めた番茶で喉を湿しながらね。
「金田だって意地悪だぞ」
「?」
「すごく速い球とか曲がるのとか投げるだろ」
「うん」
「そしたら打ちにくいじゃないか」
「そう・・・だね」
「遅くて真っすぐな球をな、ど真ん中に投げてやりゃあ良いのに、意地悪してんだ、はっは、わかるか慧」
「・・・」
 同じ論法は相撲やプロレスにも及んだ。
「大鵬もそうだし、ジャイアント馬場だってそうだ」
(中略)
「相手の嫌がることをするんだ、意地悪のチャンピオンなんだよ」
「・・・(でも馬場ってけっこう負けるよ)」
「あれ?・・・待てよ」
 急におじいちゃんは黙り込んだ。
 なんか真剣に考えてる。
「おお、そうか!」
 世紀の大発見みたく膝を打って、
「〈負けるが勝ち〉ってのはそういう意味だったのか?」
「?」
「慧のルールだと王も大鵬も馬場も、みーんな反則負けだもんなあ、はあっはっは」
「?」
「勝負に勝つとルールで負ける、ルールで勝つと勝負に負けるってか、こりゃあいい、くっくっく」
「?」
「子供のくせに穿(うが)ったことを言うよ」
 おじいちゃんは顔を上気させて、一人合点してた。
 まだ日も高いのにいそいそ晩酌の用意なんかしちゃってさ。
 茶色い瓶の麒麟麦酒抜いて、皿にはマルハの魚肉ソーセージ斜め切り、マヨネーズ添えてね。
「慧、おまえ哲学者になれるぞ」
 麒麟のロゴ入り一合コップを美味そうに干す。
「テツガ・・・?」
 おじいちゃん、予言的中したよ。
 私は現在57歳で、近くの女子大で教えてます。
 おじいちゃんのおかげさ、あたまを鍛えてくれてありがとう。
 めでたし、めでたし。

 ってなればいいんだけど、この話には続きがある。

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