私たちは互いに茶化し合いながら大いに笑い合った。空(くう)で絡み合うアルトとバリトンの笑い声(デュオ)は、前奏曲(プレリュード)。延音記号(フェルマータ)のように青空に向かって響き続ける。
昨夕、偶然出逢った60歳上の楽友が、私に希望の序曲(シンフォニア)を聴かせてくれた。燻っていた心が徐々に輝きを取り戻す。受難曲(デュオ)はもう終わり。あの青空の遥か彼方にいる音楽の女神(ミューズ)に聴こえるよう、新たなる自由な狂詩曲(ラプソディー)を謳うのだ。うじうじ、悩んでいたってしょうがない。明日は明日の風が吹く。今、自分ができる精一杯の音を奏でよう。だって、やっぱり私はヴィオラが好きだから。
だから、とりあえず今宵は、この蒲田(まち)でヴィオラを弾こう。プラチナ楽団と一緒に心から思いきり楽しんで。
久しぶりに今夜はぐっすり眠れそうな気がした。寒い冬の長い夜に見る夢は、きっと、そう…小さな親指姫になって、真っ白な睡蓮の花の上で眩い陽射しを浴びながら、この世の憂いを全て薙ぎ払い、呑気に転寝(うたたね)をしている夢だ。