取引先の社長からは遅刻したことに対して、散々嫌味を言われた。契約も保留となった。上司に報告すると、耳鳴りがするほど叱責された。
青く澄みきった空に貼りついた眩い太陽の光は、僕の心にまでは届かない。
道路の向こう側、あの駄菓子屋が見える。信号が青に変わり、僕はゆっくりと駄菓子屋へ向かった。この歳で駄菓子屋へ入るのは、なかなか勇気が必要だけど、なんだか無性にあの甘いいちご水が飲みたくなった。
「いらっしゃい」
その優しい声は、僕をそっと包み込んだ。僕は窮屈だったネクタイをはずすと、継ぎ接ぎだらけの丸椅子に座った。