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『食いきれないパスタ』鷹村仁

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黙々と、だけどゆっくりと戸崎の手が動く。40にもなって食べ物でこんなに無理するとは思わなかった。よく学生の時はこんな量を食べられたと感心する。
「なんで大盛りなんか注文したんだよ。」
黙々と食べている戸崎に質問する。考えてみるとおかしい。久しぶりに蒲田に来て友達の結婚祝いをしてやろうと思っていたのに、いきなりパスタ屋に連れてこられて、勝手に大盛りを注文される。
「懐かしいだろ。」
 当然のように言ってくる。
「だからって大盛りじゃなくてもいいだろ。」
「大盛りじゃなくちゃだめなの。」
「なんで?」
「・・・」
 戸崎が食べる手を止めてこちらをジッと見る。そして顔を少し近づけてくる。
「あのな、大き声出すなよ・・・ここな、もうすぐなくなるんだ。」
「嘘。」
「本当。」
 また戸崎は食べ始める。
「なんでお前が知ってんだよ。」
「・・・ここに新しいビルが建つんだよ。そんでここの不動産持ってんのが俺んとこの会社なの。」
「・・・。」
「だからこの大盛りを記憶に刻んでおくんだよ。ほら、食べろ。」
 新しいビルが建つ。当たり前だが初耳だった。そのために戸崎は私をここのパスタ屋に連れてきたのかと思うと納得がいった。
「そうか、ちょっと寂しいな。」
「そうだな。学生の時はめちゃくちゃ使ったからな。」
「ここのマスターはすんなりか?」
「俺は直接話してはいないけど、案外すんなり応じてくれたみたいだな。」
「そうか。」
「ビルのテナントに格安で入れる案内もしたんだけど、年も年だから断ったって。」
「・・・年ねぇ。」
 街が変わって行くのは仕方ない。蒲田全体が変わってきているんだ。ここだけ変わらぬ姿でいる方が難しいのかもしれない。しかし寂しさは残る。
「だから、ほら、食べろ。」
 話の内容と食べられる量は関係ない。だが、なんだか申し訳な気持ちもあり、ゆっくりとフォークを手に取り食べ始める。

「限界。」
 再開してから5分も経たずに根を上げてしまった。

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