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『ダイエット』鷹村仁

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「ほんの少し痩せたな。」
 まず会社の同僚から言われた。
「え、本当?」
「ああ、なんとなく。」
 凄まじく嬉しかった。
「そういえば口臭も気にならないな。」
「おお!」
 思わず歓喜の声を上げた。気を付けていた事が身を結びだすと嬉しい。
 嬉しい事は続くもので、次は妻が言ってきた。
「少し痩せたわね。」
 心の中でガッツポーズをする。
「続ければ、これからもっと痩せるんじゃない?」
 俄然やる気が沸いてくる。あと口臭についても「気にならない」と言われた。今の所やって来たことは間違いじゃない。しかしまだ最大の難所、“娘”がまだ残っている。「別に。」と言われて以来口を聞いていない。
「はい。」
 ここ最近、通常になってきたホッピーが出て来た。これのおかげで禁酒が出来ているかもしれない。良く冷えたホッピーを良く冷えたグラスに注ぐ。もし、ダイエットを辞める時が来てもビールに戻らなくてもいい気がしていた。今の自分にはホッピーが合っている。
「そういえば、どうするの?三者面談。」
 気にしていた事を妻から突っ込まれる。返答に詰まる。
「・・・どうしようか?」
「私行こうか?」
 このダイエット、口臭、禁酒は娘の“三者面談”から始まっているので、行けるものなら行きたい。一応会社には半休の届けを出している。
「なんか香織は言ってる?」
「特に何も言ってないわ。」
「そうか。」
 娘にいきなり好かれようとは思ってはいないが、どう感じているのかは気になる。父親ながら娘の扱いに困ってしまう。

―――――1か月後。
 ちょっと体質が改善されてきたのか、痩せるスピードが上がった気がする。ダイエットの広告やCMのような劇的な痩せ方はしていないが、着実に痩せている。禁酒もしっかり歯磨き&マウスケアも続いている。社内でも家庭でも、何も気にせずに会話しているし、ビールを飲まなくても平気になっている。
 あとは“娘”だけだ。
 “三者面談”は明日だ。行っていのかどうか確認しなくちゃいけない。勝手に行ったら何年間は口を聞いて貰えないだろう。

 夕飯が終わり、テレビのバラエティを見終わった香織が部屋に引っ込もうとしていた。
「香織。」
 ここを逃したら、たぶんダメだ。
「・・・何。」
 振り返りぶっきらぼうに答える。この時点で心が折れそうになる。
「明日の三者面談な、お父さんが行ってもいいか?」
「・・・。」
 無言。その表情からは何を考えているか全く読めない。
「どっちでも。」
 またもやぶっきらぼうに答え、そのまま部屋に行ってしまった。
 どっちでも?それは行ってもいいと言うことなのか?分からずに洗い物をしている妻に視線を向ける。
「どっちだ?」
 妻が苦笑する。

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