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『ダイエット』鷹村仁

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 うめき声を上げながら『めんどくさい』と言う本能に逆らう。ゆっくりと体を持ちあがらせて、うつろな目のままジャージに着替える。頭は面倒なのでぼさぼさのまま走りに出かけた。

 ―――――決意の日から二週間。
 かろうじでやり続ける事が出来ている。朝は辛いし、禁酒も死ぬほど辛い、きちんと歯磨き&マウスケアもめんどくさい。辛い、めんどくさいしかないが、何とか踏ん張っている。
「飲みに行くか。」
 同僚の甘い誘いも断った。
「・・・。」
 嫌悪感むき出しの無言の娘にも、何も言わず耐えている。なるべく近づかない。
「五分!」
 そう言ってから歯磨きを丁寧にした。
「うううううううううううう。」
 呻きながらも頑張って朝起き上がった。

――――――三週間。
 見た目の大きな変化はあまりないが、自分の中で少し『シャキッ』という言葉が沸き始めていた。『俺は頑張っている。』という自我だろうか。なんにせよ良い傾向だと感じる。妻も応援してくれているんだろうか、何も指摘はしてこないが食生活も自分のだけヘルシーなものが出るようになっていた。そしてそんな時に、もう一つ、妻の優しさが出て来た。
「はい。」
 と食卓の上に飲み物が出て来た。『ホッピー』だった。
「なにこれ?」
「ホッピー。ビールの代わり。」
 予想していなかった飲み物が出て来た。
「あなた、最近頑張ってるじゃない。ビールは出せないけど、これなら大丈夫なんじゃないかと思って。」
 ホッピーのラベルには『低カロリー』、『低糖質』、『プリン体ゼロ』、と書かれている。知ってはいたが飲んだ事はなかった。
「いいのかな・・・。」
 妻の気遣いは嬉しかったが、ここで禁酒を辞めてしまったら元も子もない気がする。
「ホッピー自体はアルコールじゃないわよ。」
「え、そうなの?」
「ビールテイストの清涼飲料水。焼酎で割らなきゃ大丈夫よ。」
「あ、そう・・・。」
 じゃあ、大丈夫か。と思い、コップに注ぐ。見た目はほとんどビールだ。
「・・・。」
 味もほぼビールだ。なんだか久しぶりにビールを飲んでいる感覚になった。
「どう?」
「いいんじゃない。」
 こんな物があるなら、始めから飲めば良かった。
「でも飲み過ぎはダメよ。」
 釘を刺すように妻が忠告する。
「はい。」
 そう言って、コップに入ったホッピーを飲み干した。

―――――四週間後。
 徐々に走る事も、歯を丹念に磨く事も、禁酒も慣れて来た。もちろん気を緩めるとサボりたいと言う気持ちが沸いてくるが、何とか抑える事が出来ている。

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第6期優秀作品一覧
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