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『自然な流れで、ホッピーで。』鷹村仁

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「そろそろ帰ってきたら。」
 母親がいつもそう声をかけてくれる。しかし自分が有名になるまで帰る気はなかったのでいつも断っていた。しかし、8年の歳月が自分の心境を少しずつ変えていった。理由の一つはお金の面がある。稼ぐことの大変さ、特に俳優なんてやっているとなかなかそれだけで食っていく事は難しい。生活していくためにイタリアンでアルバイトもしている。一人で生活しているといろんな面で親のありがたみが分かった。父親は自分を心配しての反対だったのだと、今なら少し理解できる。
「それとね、いつまでもお父さんとお母さんは元気じゃないからね。」
 母親のこの言葉も心境を変える言葉だった。「いくつだっけ?」と聞くと「60。」と答えた。60歳はまだまだ元気なイメージがあるが、病気だったり色んな事が起こりやすい年齢でもある。母親の言っている事ももっともだと思った。俳優としてはまだまだ胸を張れる訳ではないが、親のありがたみが分かったのと、今なら父とちゃんと会話が出来るかもと思い、今回母の言う通り帰る事にしたのだ。

「じゃあ、ホッピー。」
 そう母が言った。実家に帰る前に何かお土産でも買ってった方がいいかと思い、母に尋ねたら「ホッピー」と返してきたのだ。知ってはいたが飲んだ事はなかった。そういえば実家の冷蔵庫にいつもホッピーが入っていたのを思い出した。
「それだけ?」
 通常の帰省ならそれで良いと思うが、8年もの空白をホッピーだけで埋めるのは少し不安に感じた。
「充分。じゃあ他に何があるの?」
 母の突っ込みが入る。そう言われると他に何も浮かばない。
「ただ帰ってくるだけでそんな改まってどうすんの。お父さんホッピー好きだし、そういう肩肘張らないのがかえって良いのよ。」
「・・・。」
 母が言っている事はもっともだ。ただ実家に帰るだけなのだ。通常もへったくれもない。
「じゃあさ、ネットで注文するから受け取ってね。」
「分かった。それじゃあね。」
「はい。」
 そう言って電話を切った。早速ネットでホッピーを検索した。そしてホッピーにも何種類かあるのを知った。詳しく分からなかったので「ホッピー ワンウェイ瓶330ml×24」なるものを注文した。これだけで父親との距離が縮まるとは考えにくいが、話のとっかかりにはなるかもしれない。
「・・・。」
 しかし、まだ実際に飲んだ事がない。明日実際に買って飲んでみようと思った。

 「うおっ・・・。」

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