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『バイトリーダー』黒藪千代

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 (元気か?明日の夜バイト休みだろ!空けとけよ!)
 正樹君からのラインに気づいたのはバイトに出かける直前だった。自転車を走らせ信号待ちで立ち止まって返信を返す。
(明日、何かあるんですか?)
 すぐに既読が付くとライン電話が鳴った。
「これからバイトなんですけどぉ、手短にお願いしますぅ」
 久しぶりに聞く正樹君の声に気持ちが弾んでほころぶ頬。
「明日おまえのバイトリーダー祝いしてやるよっ!」
「えっ!正樹君の奢り?やったぁー」
「まぁ、奢りだけどな!俺だけじゃないんだ。実はリーダー会ってのがあって、俺もちょうど去年の今ごろお祝いしてもらったんだ!」
「リーダー会?なにそれ」
 正樹君と二人じゃなかったとわかってちょっとガッカリする気持ちが声に出てしまった。
「来ればわかるよ!明日夜8時に駅前のげんちゃんって居酒屋だから!遅れんなよ!入口にホッピーの旗がぶら下がってるからすぐわかるよ!」
 手短にとは言ったけど、正樹君はそれだけ言うとさっさと電話を切ってしまった。
 ガッカリしながら腕時計を見て、慌てて自転車を走らせバイトに向かった。

 ショッピングモールの一角にある持ち帰り専門の寿司店。高3の時からこの店でバイトをしていたずっと一緒に働いて来た正樹君が2ヶ月前、大学卒業を期にバイトを辞めた。
 注文が殺到するお正月を過ぎると春からの就職に向けてこの時期にバイトを終える先輩が多い。この店では経験が二年以上になる学生バイトは社会人になる前にバイトリーダーになるという決まりがあった。私もいつかはバイトリーダーと夢見ていた時期もあった。リーダーになると皆より30円時給が上がる。30円の時給アップにどれ程の仕事量があるのか考えもしないで漠然とその呼び名の響きに憧れていた。しかし歴代の先輩リーダー達は声を揃えて言った。
(大変だぞ!リーダーになる前に辞めたほうがいい)と。
 先輩達の助言を思案しなかった訳ではないが、私もあと1年で大学卒業。長かったバイト生活を終えるのだ。
 今更どこか他のバイトを探して慣れない仕事に取り組み、人間関係に気を使うよりも、長年勤めたこの店にいる方が楽だと思えた。悪戯に微笑む前リーダーの正樹君から肩を叩かれ(頼むぞ!)と言われる事にも少々の優越感すら感じていた。

 夕方の一番忙しい時間が過ぎ、ほっとしていた時に電話が鳴った。新人バイトの彩香ちゃんが受話器を持ち上げ、ぎこちなくマニュアル通りの口上を述べる。片耳で彼女の声を聞きながら閉店の準備に取り掛かった。

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