ブックショートでは毎月2つのテーマをもとに、これまでの優秀作品のなかから短編小説を特集していきます。
今月末の東京マラソン開催にちなんで2月の特集②は「メロス」がテーマ。
走る二次創作です。
メロスは激怒した。大手メーカー勤務の超一流営業マンのメロスは、行きつけの牛丼屋で邪智暴虐の限りを尽くすバイトリーダーを除くべく、牛丼屋への転職を決意する。猶予は三日間。メロスよ、三日後の日の出までに完璧に仕事の引き継ぎや送別会を済まし、バイトリーダーの悪の心を打ち砕くため、歌え!
セリヌンティウスの中でメロスへの疑念が湧き出てきた。最初のうちは必ず戻ると信じていたが、少しずつ、少しずつ、処刑の時が近づくにつれて、もしかしたら戻らないかもしれないという思いが次第に膨らんでいく。
彼は突如襲ってきた強烈な便意と戦っていた。頭の中では一人二役。「目的に向かって走っている俺はまさしくメロスであり、さらにその走る俺をひたすらに信じる俺は、メロスであると同時に彼の友人、セリヌンティウスだな。」
旧友の借金のため軟禁される阿戸嵐助。友人は、明日までに300万円準備すると家を飛び出した。借金取りは『走れメロス』と同じ状況だ、と楽しそうだ。太宰治の名作のエンディングがどうなったのか、その場にいる誰も思い出せない。
「……メロス様の今後ますますのご活躍をお祈り申し上げます。 敬具」メロスは大学4年生、厳しい就活戦線に何も知らずに飛び込んでしまった。企業から送られてきた不採用通知のメールから採用活動の理不尽さに怒りを覚えたメロスは、その不満を面接官にぶつけてみるのだが……。
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