ブックショートでは毎月2つのテーマをもとに、これまでの優秀作品のなかから短編小説を特集していきます。
大晦日に聞く除夜の鐘にちなんで、12月の特集②は「煩悩」がテーマ。人間のさまざまな欲望を描いた作品をピックアップしました。
読書で煩悩から解き放たれるかも!?
家族は皆外出し、一人自宅に残された中年男性。ついに長年の願望を叶えるチャンス到来!とばかりに、上半身裸で鏡の前に立つ。その手には、赤いブラジャー。「いや、オレは…変態じゃない、オレは変態じゃない」
「俺がこうやって来てるんだぞ! なんだその態度は!」怒号とともにテーブルをたたく音が、区役所に鳴り響いた。集まる視線、職員の怯えきった顔―菅内康夫、五十五歳。ライフワークは区役所の公務員を鍛え直すことだ。
彼女は少女の秘密の隠し場所を母親特権でこじ開けた。母親に隠し事をしようなど言語両断。恨むならこの私の腹の中で面倒な性格を選んだ自分を恨みなさい。毎度毎度のことながら、真紀の本音を知るためにはこうするしかないのだ。
三木信孝は鼻息荒く帰り道を急いだ。今日は「魔法少女モモカ」の放送日。帰りがけに残業を押し付けるなんて、信じられない。用事があると断れば「その用事は何だ?」なんて聞くのはパワハラだ。人事に相談して左遷させてやる。
父の死後、母と田村は再婚した。それは不幸の始まりだった。物心ついた時から父の秘書だった田村は父というよりお兄ちゃんだった。再婚後も、今まで通り「お兄ちゃん」と呼んだ。母には叱られたが、田村はそれでいいよと笑った。
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