父は満足げに頷いている。
「亜紗見、ゆっくり食べなさい」
「うん。ありがとう」
私は、お寿司に手を伸ばそうとした。その時、私の鼻から体中に幸せが駆け巡った。
家族全員、同じ匂い……。
その瞬間、私の目からどくどくと涙が溢れだした。潤んだ視界から心配そうに私を見る父、母、淳平が見える。私は慌てて、
「鼻にきたーーっ!」と泣きながら笑った。
「姉貴、まだ食ってないよ」
淳平が噴き出した。父と母も続けて笑い出す。
私は、もう一度、深く深く匂いを嗅いだ。
明日、朝一番の電車で東京に戻ろう。
私はもう大丈夫だ。
私の心と体が一致した。