今井さんの声に、私たち姉妹は顔を上げた。私たち姉妹は、お互いの泣き腫らした目を見合って、思わず吹き出してしまった。姉は、私の頭を撫でて涙を拭いてくれた。こんな風にしてもらうのは、小学校の時以来だ。なんだか照れくさいけれど、とても嬉しかった。
今井さんが淹れてくれたコーヒーの香りは、まるで私たちを包むように広がった。
私たち姉妹は、深くその香りを吸い込んで、母がやっていたように香りをじっくり味わった。母の真似をすれば、なんだか不思議と落ち着いた。得体のしれない不安も、寂しさも、こうしているときちんと向き合える気がした。
「また来てください」
「今井さん、姉はフリーです」
「何言ってんの?あんたは」
顔を赤らめながら姉が怒っている。今井さんは私たち二人を見て笑いながら
「フランスから帰ってきたら、必ず連絡するね」
今井さんはそう言ってさわやかな笑顔を残して、去って行った。
また今井さんに会える日が来るまで、私は私の毎日を泣いたり、笑ったりしながら歩いて行こう。時々寂しくなったら、コーヒーの香りを母と一緒に味わおう。そうすればきっと、越えていける気がするから。