これもまた芝居臭いし、実際に戦っているのは清蔵さんである。八重ちゃんはやおら立ち上がり、書斎を飛び出て階段を駆け下りた。
このままでは旦那様がやられてしまう。どうひいき目に見ても、旦那様は猫より弱い。別に花壇なんてどうなったっていいのだ。今は旦那様を守ることだけ考えていればよい。
「旦那様、待っててください! 私が助けます!」
このとき私には、八重ちゃんがとても大きく見えた。今まで旦那様を支えていたのでもなく、旦那様に仕えていたわけでもない。旦那様を守っていたのだと、私はこのときはじめて知ったのだった。