メニュー

  • トップ
  • 受賞一覧
  • 映画化一覧
  • 作家インタビュー
  • 公募中プロジェクト
  • 創作プロジェクト
  • お問い合わせ
               国際短編映画祭につながる「ショートフィルムの原案」公募・創作プロジェクト 奇想天外短編映画 BOOK SHORTS

\ フォローしよう! /

  • トップ
  • 受賞一覧
  • 映画化一覧
  • 作家インタビュー
  • 公募中プロジェクト
  • 創作プロジェクト
  • お問い合わせ

『家族の湯かげん』籐子


  • 応募要項
  • 応募規定


 夫はきっと、今もどこかで聞いているだろう。俺は一生陽水を歌い続けるぞ!なんて言いながら。
「お母さんは、お父さんを想う気持ちと同じぐらい、美幸の事も大切に想ってる。だから、どれだけ距離が離れても、全然寂しくないわ。あなたは、自分の幸せを第一に考えなさい」
 美幸は、しばらく黙っていた。
 そして、大きく息を吸い、自分の顔にバシャっとお湯をかけた。
「お母さん。ありがとう」
 美幸は、私の目をまっすぐに見て言った。顔はお湯で濡れているが、私を見つめる目は、赤くなっている。
 最後まで私に涙を見せようとしない姿が、愛おしくてたまらなかった。

 あれから半年。街はすっかり冬の気配。ひんやりとした空気が、身に染みる。
 美幸達がオランダに行って、4ヶ月が経とうとしていた。直前まで準備でバタバタしていて、ゆっくりと別れの時間を惜しむ暇もないまま、3人はオランダへと旅立った。
 少し生活が落ち着いたのだろうか、美幸から手紙と写真が届いた。新しい家で撮った三人の写真と、俊介さんと雫が楽しそうにお風呂に入っている写真だった。

「お母さんへ
 元気にしていますか?オランダはまだ11
 月なのに、もう真冬の装いをしないと外に出られない程の寒さです。こっちの人は寒さに慣れているので、こんなのまだ序の口だよと言われるのですが、私達にはとても厳しいです。でも、みんな優しくて、色んな場面で助けてくれます。そのおかげで、こちらでの生活にも少しずつですが、慣れてきました。
 お母さんがこの前送ってくれたバスロマンのプレミアム温浴、毎日使っています。ヨーロッパの人は湯舟につかる習慣がないんだけど、私たちはやっぱり毎日お風呂に入らないと落ち着きません。身体を芯からあっためてくれるから、雫も風邪をひかずに元気に過ごしています。
 最近、俊介さんと雫がよくお風呂で歌を歌っています。その歌声を聞きながら夕飯の準備をするのが、今の私の楽しみです。いつか、お母さんもそんな事を言ってたよね?まだまだ新米の母親だけど、ちょっとお母さんの気持ちが分かった気がします。
 お母さんも、これから寒くなるだろうし、体調に気を付けて、元気でいてね。いつも、お母さんとお父さんの事を想っています。
               美幸」

 母親という生き物は、みんな思う事は同じなのかもしれない。家族の幸せが自分の幸せで、家族のためならどんな事でも頑張れる。

8/9
前のページ / 次のページ

9月期優秀作品一覧
HOME


■主催 ショートショート実行委員会
■協賛 アース製薬株式会社
■企画・運営 株式会社パシフィックボイス
■問合先 メールアドレス info@bookshorts.jp
※お電話でのお問い合わせは受け付けておりません。


1 2 3 4 5 6 7 8 9
Copyright © Pacific Voice Inc. All Rights Reserved.
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー