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『虫退治』佐藤大貴


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8月期優秀作品

『虫退治』佐藤大貴

 
 都会の蒸し風呂のような暑さに比べれば、田舎は幾分涼しい。ただ、蝉がうるさい! 
 久しぶりのばあちゃん家。親父の生まれ育った家でもある。中に入ると、天井や壁はひび割れ、剥がれ落ちた破片が所々畳の上に転がっている。おまけに、蜘蛛の巣はたくさんあるし、得体の知れない虫がブンブン飛び回っている。昔からボロボロだったけど、ここまでとは…。
 元々、この家は寺子屋だったらしい。それをひいひいじいちゃんが買い取り、ひいじいちゃん、じいちゃんと受け継がれた。そのじいちゃんは三年前に他界、ばあちゃんも今年の初めに亡くなったため、今は誰も住んでいない。荒れるのも当然といえば当然だが…。
 そんなばあちゃん家というかじいちゃん家があるこの地域では、初盆を迎える故人の家へ伺い、お参りをするという風習がある。だから、ばあちゃんの初盆を迎える前に、こうして片付けに来たのだ。いや、使いに出されたというのが正解か…。大の虫嫌いな俺が買って出る訳がない。そりゃあ、小さい頃はバッタとかカマキリとか訳も分からず捕まえたよ。でも、今じゃ到底考えられない。
 そんな俺を、この家に派遣する親父の感覚が全く理解できん! モラハラだ! モラハラ! と、心の中では思っているが、反抗できない俺…。仕方なくやることにしたが、一人じゃあまりにも心細いので、妻の珠里に、
「一緒に行かない…?」
と、誘ったところ、
「私、虫ダメだから!」
と、一蹴。こうして、四歳になる息子の優輝が犠牲となった。当の本人は、嬉しそうだが…。
 念のため、優輝に確認してみる。
「ここは、どこでしょう?」
 すると、優輝、
「大おばあちゃん家!」
 と、即答。驚いた。優輝はここへ数回しか来たことがない。数か月前に、ばあちゃんの四十九日で来たけど、覚えているとは…。バカにし過ぎか…? 
 ここ数年、ばあちゃんに会うのは、この家ではなく、もっぱら入院先の病院。俺たちが見舞いに行く度に、ばあちゃんは優輝へお小遣いをくれた。優輝からすると、ばあちゃんは、金の生る木。故に、優輝はばあちゃんが大好きである。子供らしいといえば、子供らしい。
「よくわかったな!」
 と、褒めると、ドヤ顔の優輝。が、次の瞬間、
「まんまんちゃんする!」
 と、家へ上がり込み、奥に見える仏間へ向かう。
「待て!優輝!」
 パパを置いてかないでくれ~! 

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