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『ハナ爺とボク』高岡美幸


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8月期優秀作品

『ハナ爺とボク』高岡美幸

 

 ハナ爺がボクのところに来てから、もう3年だ。

 ハナ爺って、ボクのいちばんの友達で、おじいちゃんみたいな顔の犬の事。
 本当は女の子のハナちゃんなんだけど、おじいちゃんみたいなヒゲがはえてるんだ。
 だからボクがハナ爺って呼んだら、ママもパパもおじいちゃんも、みんなハナ爺って呼ぶようになった。
 もともと、ハナ爺はおじいちゃんが飼ってた犬だったんだ。でもおじいちゃんが死んじゃったから、ボクが世話する事になった。
 おじいちゃんと約束してたんだ、おじいちゃんがハナ爺の世話できなくなったら、ボクが世話するって。
 だからボクがちゃんとやらなくちゃ。

 ハナ爺って、ボール投げても取ってこないし、追いかけっこしようとしても歩いてるし、寝てばっかりなんだけど、ボクが行くと、しっぽをブンブン振ってすごく嬉しそうなんだ。なんか笑ってるみたいな顔になるのがかわいい。
 そうだ、もう夏だから蚊取り線香もつけてあげなきゃ。蚊取り線香の匂いってすごく好き!この匂い嗅ぐと、昔ママとパパと花火やった時を思い出す。すっごく楽しかった。
 そういえば最近花火やってないな。ママに言ってみようかな…。
 でも…ママ、忙しいから無理かな。

 
 散々迷ってボクは、夕ご飯の時に思い切ってママに言ってみた。
「ねえねえ、昔、花火やったの覚えてる?」
「花火?そうだねー、晴人が小さい頃庭でよくやったよね。」
 …ママが花火の事覚えてた!
「あのさ、あのさ、」
「そのコロッケ、美味しくない?さっきから全然食べてないじゃん。いつもと違うカボチャ入り買ってきたんだけど、普通のが良かった?」
 ボクはひと口しか食べていなかったコロッケを見た。花火の事言いたくて、ごはんが全然進んでなかった。
 ママはボクがごはん食べるの遅いと、少し不機嫌になる。
「ううん、これも美味しいよ。たまにはカボチャもいいよね」
「そう?良かったー」
 そして花火の事は言い出せないまま、一生懸命ごはんを食べた。

 
 ママは仕事が忙しい。いつも、「ああーやる事多い、もう駄目だ、無理だー無理だー」とか言ってる。
 あとたまに「いつもお惣菜ばかりでごめんね」って言う。
 なにがごめんねなんだろう?ボク、コロッケ大好きなのに。

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