「うん」
「今はちょっとヤキモチ焼いちゃうんだよきっと。でも来年は小学生だしさ。もっと大きくなったらきっとだいじょうぶだよ」
「うん」
「早紀ちゃん」
「うん」
「美優のこと好き?」
「好き」
「ほんとに?」
お姉ちゃんは疑いの目を向けたような気がした。だから、わたしはムキになって言った。
「好きだもん」
お姉ちゃんはまたけたけたと笑った。笑い方がママに似ている。
「じゃあ、だいじょうぶだね」
「うん」
「お姉ちゃんはもう行くね」
「うん、あ――」
わたしはお姉ちゃんの顔を見つめた。
「お姉ちゃんのお名前は?」
お姉ちゃんは微笑んでから答えた。
「あおい、だよ」
「あおい? あおいは色の名前だよ。変なの」
お姉ちゃんは空を見上げた。わたしもつられて空を見上げた。
空はむらさきだった。うすいむらさきだった。
でも、見てるとだんだん青っぽくなった。
お空が青くなった。
***
薄紫色だった世界はもとの色に戻っていた。
空を見上げていた顔を戻すと、公園に早紀がいた。
「早紀――」
「ママ――」
私と早紀は見つめ合った。公園には二人きりだった。
「早紀、どうしてここにいるの?」
「ママこそどうして?」
「美優を探しに来たの」
「ママ、みーちゃんのこと、思い出したの?」
「え? 早紀こそ、みーちゃんのこと、思い出したの?」
「最初から忘れてないよ。忘れてたの、ママでしょ?」
「ママは忘れてないよ。忘れてたの、早紀でしょ。もしかしてみーちゃんのこと覚えてない振りしたの?」
「そんなことしてないよ」