夢桜は、そんなパパの反応を見てるのか、見てないのか、ジタバタジタバタ、キャッキャキャッキャを繰り返して、抱き上げようとするパパを焦らせて楽しんでいる。
このカメラを買ったのは、夢桜が生まれてすぐだった。
この子の成長記録を残したくて、ちょっとお高い買い物ではあったけれど、ネットの情報を調べたりして買ったものだ。
最初に撮影したのも、もちろん夢桜だ。
自宅のベビーベッドで寝ている夢桜の寝顔を撮ったのだが、手ぶれとピンボケがひどくて情けない代物だった。写真を撮っている様子を横で見ていたパパにも、ずいぶんと突っ込まれてしまった。
「何だよ、これ!へったくそだなー」
「だって仕方ないじゃない、結構このカメラ重いんだもの。それに、一眼レフなんて、初めてなんだから」
そんなことを言い合っていたが、それでも、その時の写真は今でも残してある。
そんなひどい写真でも、夢桜と、パパと、私の、初めての記念だから。
「ママ、ミオのハイハイ、撮れたのか?」
ちょっとだけ昔のことを思い出していた私に、パパが声をかけてきた。
そう言えば、私たちが「パパ」「ママ」と、お互いのことを呼び合うようになったのはいつ頃からだっただろう。
夢桜がまだ私のお腹の中にいて、少し動き始めた頃、二十三週目か四週目だったと思う。
お腹に手を当てると、中でこの子が動いているのがわかるようになってきた頃。
その頃までは、パパのことをまだ『ヒロくん』と名前で呼んでいた。
ヒロくんが、私のお腹に優しく手を当てたり、耳を押しつけたりしながら、
「パパだよー、聞こえてるぅ?」
なんて言いながら、お腹の中のこの子に話しかける時に、自分のことをパパと呼び始めたのが最初だった。
まだ名前も決めていなかったこの子に、パパは毎日毎日、よく話しかけていた。
そして、なんとなくパパにつられたのか、私も、お腹の中の夢桜に話しかける時には自分のことをママと呼ぶようになった。
気がついたらいつの間にか、私たちがお互いに呼び合う時も、「パパ」「ママ」になっていた。
――これが、家族になるということなのかなぁ……などと思う。
「うん。ハイハイ撮れたよ、少しだけど。
パパが夢桜に遊ばれてるところはいっぱい撮れたんだけどね」
「なんだよー、それ」
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夢桜の一歳の誕生日。今日も、私はカメラを構えている。
目の前の、食卓代わりにしているローテーブルの上には、十二センチの苺のホールケーキが置かれている。
ケーキ屋さんで予約しておいたものを、今日、パパが会社の帰りに引き取ってきてくれたものだ。
一歳の子供でも食べられる『ファーストバースデー』用に作られた特別なケーキ。
白いクリームでデコレーションされた上に、赤い苺がケーキの縁をなぞるようにピッチリと並べられている。
その真ん中に、今立てたばかりの一本の小さなローソクがある。
膝の上にちょこんと座っている夢桜を庇うような格好で、少し身体を捻りながら、そのローソクにパパがライターで火をつけた。
「じゃあ、いくよ」