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『言う』室市雅則


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 グッと距離を縮めてきたと思われたら恥ずかしい。
 まだ『タッくん』と呼んだ方が良いのだろうか。
 それだとタッくんがお父さんになることにネガティブなのかと思われそうだ。
 迷う。
 今、会話のボールは僕が持っている。
 そろそろパスを出さなくてはならない。
 明らかに二人は僕の返事を待っている。
 だから、試しに小声で言ってみた。
 「え?ごめん、何?何て?」
 お母さんが耳に手を当てた。
 改められると言いにくい。
 「お、お、お坊さん…」
 お母さんが窓の外を見渡した。
 「あ、本当だ」
 お母さんが見る方を僕も見た。
 砂浜でお坊さんが海に向かって手を合わせている。
 タッくんもそれを横目で見て、ハンドルを握り直した。
 「そういえば、ハルに会ったよ」
 「同じクラスだった?」
 「そうそう。金魚の水槽の水を飲んだハル」
 「そうじゃなくて、家がお寺の」
 二人は同級生なのだ。
 お母さんが就職で東京に出た後、お父さんと出会って結婚をして、僕が生まれた。でも、すぐにお父さんは病気で亡くなってしまったから、お母さんは実家のあるこっちに帰ってきたのだ。それでお母さんとタッくんは再び出会った。
 ちなみに僕も二人と同じ小学校に通っている。
 二人は笑っている。
 良いコンビだと思う。
 この雰囲気なら言えるかもしれない。
 僕が『お父さん』と言ったらタッくんもお母さんも喜んでくれるだろう。
 でもまだ勇気が出ない
 少しだけボリュームを上げて言ってみた。
 「今度は何?」
 お母さんが顔だけこちらに振り返った。
 言葉に詰まる。
 「オ、オ、オットセイ…」
 「オットセイ?」
 「うわっ」

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