メニュー

  • トップ
  • 受賞一覧
  • 映画化一覧
  • 作家インタビュー
  • 公募中プロジェクト
  • 創作プロジェクト
  • お問い合わせ
               国際短編映画祭につながる「ショートフィルムの原案」公募・創作プロジェクト 奇想天外短編映画 BOOK SHORTS

\ フォローしよう! /

  • トップ
  • 受賞一覧
  • 映画化一覧
  • 作家インタビュー
  • 公募中プロジェクト
  • 創作プロジェクト
  • お問い合わせ

『言う』室市雅則


  • 応募要項
  • 応募規定



 ここで冒頭の『再婚』を知ることになる。
 車に乗ってしばらくするとタッくんが片手でハンドルを握りながら尋ねてきた。
 「ユウくん、突然だけどさ、俺がお父さんになっても良いかな?」
 「今?」
 お母さんが驚いてタッくんを見た。
 タッくんは恥ずかしいのか、運転に集中しているフリをしているのか、不自然なくらいに前を見て喉を鳴らしている。そして、キャップを脱いだ。
 お母さんが僕の方を振り返った。
 「あのね、タッくんと結婚しようと思うの。再婚ね。タッくんがお父さんになるの」
 僕はピンとこなくてタッくんを見た。 
 日に焼けたのかほっぺたが赤い。
 眉毛から上はキャップのおかげで焼けていない。
 でも、よく見るとおでこに赤いかまぼこみたいな日焼けができている。
 キャッチャー被りをしていたから、穴の空いている部分だけが焼けたのだ。
 慌てて僕もキャップを脱いで、こちらを見たままのお母さんにおでこを見せた。
 笑った。
 最悪だ。
 僕のおでこにも赤かまぼこができているらしい。
 学校でみんなに笑われる。
 タッくんも一瞬だけ振り返って僕を見た。
 笑った。
 タッくんのせいなのに。
 僕はおでこを手で押さえた。
 ムッと来たけど二人が笑うから僕も笑ってしまった。
 悔しいからタッくんにも赤かまぼこがあることを言おうと思った。
 でも口が止まった。
 もう『お父さん』と呼んで良いのだろうか。
 僕はタッくんが好きだし、お父さんになってくれたら嬉しい。
 さっきの質問の答えは「Yes」だ。
 だから、そう呼んで構わないと思う。
 でも、いきなり過ぎはしないだろうか。

3/8
前のページ / 次のページ

6月期優秀作品一覧
HOME


■主催 ショートショート実行委員会
■協賛 アース製薬株式会社
■企画・運営 株式会社パシフィックボイス
■問合先 メールアドレス info@bookshorts.jp
※お電話でのお問い合わせは受け付けておりません。


1 2 3 4 5 6 7 8
Copyright © Pacific Voice Inc. All Rights Reserved.
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー