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『言う』室市雅則


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 だから、僕はずっとそれが自然だと思っていた。
 コンビニとかで『三角』のものも食べたことはある。けれど、あれは売り物だから、家で作るものは『俵』なんだと思っていた。
 でも、運動会の時に気付いた。
 周りのみんなは『三角』で僕らだけ『俵』。
 何故か恥ずかしくて、こそこそしてしまった。(タッくんはバクバク食べていた)
 お母さんは気付いていたらしい。
 この前の遠足でおにぎりが『三角』に変わっていた。形はみんなと同じになったけど、いざそうなってみるとお母さんのおにぎりじゃないような気がした。だから、家に帰ってそのことを言ったら笑って僕の頭を撫でた。
 今日のおにぎりは『俵』で安心した。美味しかった。

 お昼の後にヘンテコ自転車に乗った。
 僕は一人で大丈夫だと思うけど、危ないからとタッくんが付き添いで入ってきた。
 お尻でシーソーみたいにサドルを押して進む自転車に乗ったらお尻が痛くなった。二人でお尻を押さえていたら、お母さんが何枚も写真を撮って笑っていた。

 あっという間に夕方。
 まだ遊びたかったけど帰る時間。
 駐車場の方に歩いていたら肩に何かが降ってきた。
 冷たいなと思って、そこを見ると白とグレーが混じった生乾きのシミがくっ付いていた。
 ハトがフンを落としたのだ。
 空を見上げても犯人の姿はとっくに見えないし、肩は気持ち悪い。
 「大当たりだなぁ」とタッくんが笑ったので腹が立った。
 お母さんが「拭くから脱いで」と言いながら僕のシャツを脱がした。
 帰る人たちがたくさん歩いていて、こっちを見た。
 ランニングシャツ姿になったので恥ずかしかった。
 ティッシュでは拭ききれなくて、まだ残っているし、濡れている。
 昼は暑かったけど、この時間は涼しくてランニングシャツだと少し寒い。
 ハトのバカ。
 「はい、バンザイ」と聞こえて、両手を上に引っ張られた。
 寒さが消えた。
 タッくんが青いシャツを脱いで僕に着せたのだ。
 サイズが全然違うからブカブカだけどタッくんの温かさが残っていた。
 僕が野球に行くみたいになって、タッくんが下着の白シャツ姿になった。
 タッくんの白シャツは少し透けていてポッコリとしたお腹が見えている。
 でもそんなの気にしたそぶりも見せていない。
 それどころかその格好でソフトクリームを買って来てくれた。
 お母さんもきっとこんな所を好きになったんだと思う。
 三人でソフトクリームを食べながら車に向かった。

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