12月期優秀作品発表
ARUHIアワード12月期にご応募いただいた作品の中から選ばれた優秀作品36作品です。
『移りゆくとき、変わらないもの』
飯島望
(①大切な「ある日」)
家で飼っていたミドリガメのトルくんが死んでから半年。月命日にあたるその日、息子が墓参りをしたいと言い出す。わたしは息子に付き合いながら、トルくんを埋めた家の庭に出て一緒に祈る。真剣に祈っている息子の姿を見て、生と死という問題を経て、息子が成長していることを実感する。
『結婚記念日のプレゼント』
吉岡幸一
(①大切な「ある日」)
はじめての結婚記念日、ふたりは喧嘩をする。夫は朝食に納豆がないことで怒りだし、妻の美幸は夫が頼んでいたハガキを出していないことに怒る。美幸は夫と仲直りがしたいと思い、パン屋をしている友達へ相談する。美幸がプレゼントをすることを考えて準備をしていると、夫から大きな荷物が届いた。
『何でもやってあげます券』
万野恭一
(①大切な「ある日」)
もうすぐ25歳を迎える杏菜と景義は同棲カップル。今の部屋が手狭になったので新居に引っ越したい杏菜だったが、年齢的にも交際年月的にも、その前に景義にけじめをつけて欲しいと考えていた。そんな彼女が使おうとしたのが、はるか昔に彼から贈られた「なんでもやってあげます券」だった。
『味噌と僕、とある日の良き思い出』
羽呉
(②新しい生活)
就職、上京、一人暮らし。美味しくないおふくろの味「袋ラーメン味噌味」をきっかけに、主人公は今一度誰かとの繋がりを意識する。慣れない業務に忙殺され始める日々の中、ある日を境に人生のやり甲斐を獲得する物語。
『マイ・スイート・ホーム』
山崎ゆのひ
(③マイホーム)
郊外にマイホームを購入し移り住んだ秋山美香は、夫の直彦と心がすれ違い悶々としていた。大雪の日、帰宅した直彦は美香の要領の悪さをなじる。しかし美香にも新居での生活や息子のことで直彦に対する鬱憤が溜まっていた。その夜、美香は自分の気持ちをさらけ出し、本音で直彦とぶつかり合う。
『落雷のサンタクロース』
長尾優作
(①大切な「ある日」)
落雷注意報が出ていた12月31日の夜。幼い娘達を残して一週間前から姿を消した『自称発明家』の夫・瀬戸際三太郎に妻の立子は愛想を尽かしたのだが、突如、目の前に『サンタクロース』が現れて、夫だと気づいた立子の怒りは頂点に――!
『希望』
ウダ・タマキ
(②新しい生活)
六十五歳-老後を生まれ故郷で過ごすこととなった。新婚生活、マイホーム……これまでの希望に満ちあふれた新しい生活とは違い、どうもこの生活には希望が見出せない。誰もいない部屋、そして遥か昔に通った小学校の校庭で私はこれまでの人生を振り返っていた。
『爺ちゃんのエチュード』
伊達巻チカ
(①大切な「ある日」)
祖父との永遠の別れが迫っている僕。母と祖父と三人で暮らしてきた僕にとって、自分が死んでも「さいならの本番ではなく練習にしろ」と聞かされていた祖父の存在はあまりに特別で奇妙なものだった。僕の胸に浮かびあがる祖父との思い出の欠片が、僕の「ある日」を埋めていく。
『それいゆ』
船山直子
(②新しい生活)
半世紀の人生に絶望した私は自死を決意するが、その前にひとつ冒険をしようと試みる。それは自分が一番輝いていた時代の場所にもう一度住んで、輝きの片鱗を感じることだった。模索していた春の日、素敵な老夫婦の営むランプ店に足を踏み入れたことから、固く閉ざされていた私の新しい扉が開いてゆく。